本研究は、日本の救急医のバーンアウトの実態と影響を及ぼす因子を解明・検証のため、日本の全救急医を対象としたアンケート形式の実態調査を目指しており、そのパイロットスタディとして2021年6月に25施設で勤務する全救急医326名を対象としたバーンアウト調査を施行した。その結果を2023年4月学術誌Acute Medicine & Surgeryにて発表し、6時間以上の睡眠、臨床経験の浅さ、救命センター型救急で勤務する医師にバーンアウトの傾向が見られるため対策が必要であることを訴えた。このパイロットスタディで、日本の救急医は諸外国に比べて、バーンアウトの3因子のひとつである"個人的達成感の低下"で重症となる数が多く、その背景には自身の能力や実績を認められない状態に陥っている心理傾向である、インポスター症候群との関連が示唆された。バーンアウトとインポスター症候群の関連を検証するため、2023年6月に30施設で勤務する全救急医400名を対象とした調査を行った。インポスター症候群の可能性があるとされたのは92名(29.9%)であった。多変量解析にて睡眠時間の短さ・ベッド管理・当直制・養育児の不在・被介護者の存在とバーンアウトの各構成因子に、若手医師・当直制・面談の存在がインポスター症候群に関連があった。ベッド管理や当直制など日本独特の因子がバーンアウトやインポスター症候群と関連があり、日本の現状をより詳細に表すには全国の救急医を対象とした全数調査が望まれる。そのため、本研究は”日本の救急医のバーンアウトとインポスター症候群の実態に関する全国調査”へと発展し、2024年度基盤研究Cと日本救急医学会学会主導研究に採択された。さらなる研究の結果を日本型モデルとして問題提起と対策提言に活用し、救急医の保持・保護、そしてより質の高い救急医療を社会に提供し、今後の日本の医療体制の堅牢化を目指す。
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