研究課題
本研究は高齢者に多くみられる多剤併用とフレイルの関係を、薬の数と種類の点から横断研究で検証した。2023年度は、2022年に東京都板橋区で実施した高齢者コホート研究会場調査の対象者1021人(男性45.4%、平均年齢77.9歳)のデータを用い、自己申告の処方薬5種類以上を多剤併用とし、フレイルとその構成要素との関係を分析した。フレイルはFriedらの5つの構成要素からなる基準の日本版改訂 (J-CHS基準)で判定した。多剤併用者は非多剤併用者に比べ、フレイル(調整後オッズ比[95%信頼区間]1.89[1.40-2.57])、体重減少(1.81[1.00-3.27])、低筋力(1.50 [1.08-2.09])、低歩行速度 (2.25[1.29-3.94])のリスクが高かった。本成果は第12回アジア/オセアニア国際老年学会議で発表し、原著論文が国際誌に掲載された(Geriatr Gerontol Int. 2024;24 Suppl 1:196-201.)。2022年度から次年度前半に、2017年に東京都板橋区で実施した会場調査対象者女性530人の処方薬情報を薬手帳から電子化し、慎重投与薬は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」より同定した。同対象者(平均年齢71.4歳)データを用い、多剤併用、慎重投与薬使用と、J-CHS基準で判定したフレイルの関係を分析した。10個以上の多剤併用、慎重投与薬使用はフレイルのリスクが高かった (調整後オッズ比[95%信頼区間] 3.39[1.10-10.41]、1.40[1.08-1.82])。本成果は2024年国際フレイル・サルコペニア研究会議で発表した。さらに慎重投与薬の数が多いほどフレイルのリスクが高い結果も得られ、論文投稿を準備している。本研究より薬の併用数や種類の適切な薬物管理が高齢者の健康維持に重要であることが示唆される。
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Geriatr Gerontol Int.
巻: 24 Suppl 1 ページ: 196~201
10.1111/ggi.14789