研究課題/領域番号 |
22K21170
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菊池 志乃 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (90865685)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 過敏性腸症候群 / 認知行動療法 / オンライン教育 / オンデマンド動画 |
研究実績の概要 |
当初の予定ではインターネットを用いて薬剤抵抗性の過敏性腸症候群(IBS)に対する内部感覚曝露を伴う認知行動療法(CBT-IE)を実施する治療者を養成するための教育プログラムを作成し、学習と治療実践の2段階の治療者教育を計画していた。具体的には、e-ラーニングサイトにアップロードした動画やテキストを用いて参加者①(治療者候補)がIBSに対するCBT-IEを学び、知識などの点で治療者要件を満たした場合に、参加者②(薬剤抵抗性IBS患者)に対してCBT-IEを実施する予定であった。しかし、参加者①のリクルートに先立ち、プログラムを閲覧してもらった心理士および精神科医、看護師らの意見より、研究計画の一部見直しを行うこととなった。 指摘内容は次の通りである。まず、参加者①に対し、知識の教育はできても1クールのCBT実践では治療者としての実戦経験としては少ないため、治療実践における結果は教育プログラムの出来ではなく患者に左右されることが指摘された。しかし、一人当たりの患者数を増やすと、参加者②の募集およびスーパーバイズにおいて実施可能性が低くなる。一方で、動画及びテキストは、患者への治療プログラムとして使用できることも指摘された。 これらの点からe-ラーニングで学べる患者治療プログラムを作成し、臨床現場でIBSを診察している医師がe-ラーニングサイトを患者に紹介して使ってもらえる形の方が、費用対効果も含めIBSに対するCBT-IEの普及という目的には合致していると考えられた。 このため、eラーニングプログラムをIBS患者に対するCBT-IEのeラーニングプログラムに修正。参加者②に対する治療をパイロット試験として実施することとした。なお、プログラムの閲覧を希望する治療者にはプログラムの有効性と安全性が報告されれば閲覧可能とすることで治療者教育についても補完することとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療者教育のためのプログラムとして作成された動画、テキストの一部改訂し、患者向けの治療としてe-ラーニングプログラムを開発し、e-ラーニングサイトを再構築した。また、研究計画は当初の第二段階の治療実践部分を用いることとした。具体的には、参加者に関しては最初の計画で治療を受ける対象であった、薬剤抵抗性の過敏性腸症候群(IBS)患者のみとした。また、評価指標や、評価のタイミングに関しても、治療実践時の研究計画と変更は行わないこととする。 プログラムの動作確認を行い、2022年10月から15名(最低10名)を目標とした参加者のリクルートを開始した。2023年3月までに12名を登録、介入を実施している。現在は治療者による短時間ガイドを導入しつつ、基本は参加者が動画とテキストベースでセルフガイドで治療を進める形としている。今後は、参加者のフィードバックを随時受けつつ、プログラムの改善をはかる予定である。 以上のように、研究計画の一部変更に伴うプログラムの改訂などを行いつつも、変更後のリクルートおよび介入の実施については順調に進んでいる。 2023年度は介入結果の統計的解析および参加者のフィードバックを生かして、動画及びテキストを改善し、ランダム化比較試験に向けた準備を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤抵抗性の過敏性腸症候群(IBS)患者に対する内部感覚曝露を伴う認知行動療法(CBT-IE)のe-ラーニングプログラムを開発した。今後2023年度は12名の参加者のパイロット試験を完遂し、脱落も含めて結果の解析を行う予定である。 その上で、本プログラムの実施可能性および問題点の洗い出しを行い、ランダム化比較試験に向けてプログラムの改定を実施する。具体的には、動画の長さやテキストの構成、ページ数、配置などについても患者評価を反映し、修正を行っていく。また、音声ファイルなどのダウンロード機能についても改定を行う。 このほか、リクルートの場面における本人確認や説明に関しても、同意説明文書だけでなく、スライドや動画を用意することで説明漏れなどがないように徹底する。また、参加者からのフィードバックから、治療者の介入のタイミング・回数・頻度や、評価のタイミング、収集方法についても再度検討を実施し、できるだけ参加者の負担が少なく、かつデータの欠損を起こさないように工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
e-ラーニングサイトの使用料が自分でデザインを構築し、1年の契約することで当初の予定より安く済んだこと、プロトコルの改変に伴い参加者の人数が減ったため、謝礼が少なくなったことなどにより、当初の予定と金額の差異が生じたものと考える。
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