本研究では1つのデータを除きすべてオープンデータを用いて解析を行った。人流データ、人口データは1kmメッシュ単位のデータを用い、エリアごとの特徴を把握するために事業所立地データを用いた。人流及び人口はCOVID-19発生前の平時における人流クラスターを検出するため2019年1月~12月のデータを利用した。研究当初は地域の感染症リスクを色によって可視化することを検討していた。しかしながら統計的に解析する方法を模索し空間疫学的手法として空間スキャン検定によって分析した。スキャン検定はオープンソースであるSaTScanを用いてリスク比を算出することで、リスクを色ではなく明確に有意差をもってして明らかにすることができた。検出されたクラスターの情報をGISソフトであるQGISで他のデータともに表現しクラスターエリアの特徴を把握した。さらに月毎のクラスターエリアを特定することができ、これまでの感染症対策では人口密集となりえるイベントを把握しその後、イベント開催場所を特定する方向性であったが、本研究によって月毎の人流集積地点を明らかにすることができた。これは、月ごとのベースライン値と期待値を元に、人流が集積するエリアをまず特定することができ、その後にイベントや地域特徴を把握するため網羅的である。本研究の結果はcovid-19のみならず、インフルエンザやRSウイルスといった感染症に適用できるだけでなく、オープンデータで構成されているため、未知の感染症についても対応可能であると示唆された。
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