運動は身体活動量を増やす有効な方略である。一方で、運動の実施により運動時間外の身体活動(NEPA: Non-Exercise Physical Activity)が減少することも報告されており、一概にすべての運動が不活動の予防・改善に有効であるとは言えない可能性がある。よって、どのような運動がNEPAを増減させるか検証し、不活動を防ぐ方略として運動を有効に活用するための基礎的知見を構築することが求められる。 本研究では、運動形態の違い(断続運動 or 持続運動)により運動中の代謝動態や運動時の疲労度が変化する可能性を示した先行知見を踏まえ、運動形態に依存して運動に対するNEPA応答が変化するか検証した。成体雄性C57BL6Jマウスを用い、運動はトレッドミル走を実施した。運動形態はトレッドミルのレーン長を変えることで操作し、30cmを長レーン(断続運動)、15cmを短レーン(持続運動)とした。いずれの条件でも中強度運動(15m/分)を実施したところ、長レーン条件では運動後にマウスのNEPAが減少せず、短レーン条件ではNEPAが減少した。これは、運動形態の違いにより運動に対するNEPAの応答が異なり、持続運動よりも断続運動の方がNEPAが減少しにくい運動形態である可能性を示唆する。次に、各条件の運動に対するホルモン応答を検証したところ、運動後の血中乳酸と血漿コルチコステロンは、いずれのレーン長においても運動による変化は確認されなかった。よって、異なる運動形態であっても、運動強度や運動時のストレス応答は変わらない可能性がある。 本研究から、運動後のNEPA減少を防ぐためには、運動形態に着目して運動方略を検討することの重要性が示された。今後、本研究のモデルを活用することで、運動形態の違いによりNEPA応答が変化する生体内要因の解明が期待される。
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