過食や過度なアルコール摂取に起因する肝臓での栄養代謝異常は、アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝を誘発し、その悪性化は肝硬変を経て肝がんを発症する。肝臓で栄養代謝を制御する小胞体結合型転写因子CREBHが、栄養代謝異常による肝がん発症を抑制する新規肝がん抑制因子として見出されているが、CREBHによる肝がん発症の抑制機構については未解明である。 本年度は、培養細胞にCREBHを過剰発現させると小胞体選択的オートファジー受容体(ERファジー受容体)の遺伝子発現が亢進することを明らかにした。マウス初代肝細胞を用いてERファジーを誘導する培養条件を確立し、野生型マウス初代肝細胞ではアミノ酸枯渇時にERファジー受容体の遺伝子・タンパク質発現が亢進するが、CREBH KOマウスの初代肝細胞では、ERファジー受容体の遺伝子・タンパク質発現が野生型ほど亢進しないことを見出した。さらに、CREBHはアミノ酸枯渇処理後2~6時間の間でERファジー受容体の発現制御に関与することも示唆された。 本研究では、絶食条件下で飼育したCREBH KOマウス肝臓を用いた網羅的解析により、がん遺伝子としても同定されているERファジー受容体の遺伝子発現がCREBH KOにより変動することを見出した。さらに、培養細胞やマウス初代肝細胞を用いて、CREBHがアミノ酸枯渇時にERファジー受容体の遺伝子・タンパク質発現を制御することを明らかにした。今後は、CREBHを介した、がん遺伝子としても同定されているERファジー受容体の発現変動と、CREBHによる肝がん発症抑制との関連について研究を進める必要がある。
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