研究実績の概要 |
ステロイドホルモンは、疾病および精神的な健康との関係が深く、高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病の発症や病態の増悪に関与している。性ホルモンもステロイドホルモンの一種である。 我々の研究グループは、血清中の20種類のステロイドを同時に定量する方法を開発した(Yamakawa M, Karashima S, Hashimoto A, Osaka I, et al. IJMS. 2022.)。従来の報告では、毛髪定量の前処理は、18 時間以上のの処理を要したが、本法では2 時間で終えることができ、かつ、毛髪1本より4つの古典的なステロイドの同定および定量が可能であった。 また、ステロイドの直接高感度局在分析法として、金属薄膜表面支援レーザー脱離イオン化(MF-SALDI)質量分析イメージング法(MSI)を独自に開発している(JCM. 2022)。この手法をベースに、いくつかの新たな工夫を実践した。例えば、光学顕微鏡と特殊な医療用メスを用い毛髪を0.04 mm の厚さに縦断スライスし、特殊な前抽出方法と誘導体試薬を使用することで、化合物の感度を2~40倍にまで増大することに成功した。結果、複数のステロイド代謝物の毛髪中局在イメージングが可能となった。さらに、局在イメージング画像に対して、アンターゲット手法を用いて解析したところ、従来、毛髪中に存在を報告されていなかった特定のステロイド化合物が、古典的なステロイドと同等以上に存在することが判明した。このステロイドの存在量は、性差によって異なり、性ホルモンに関連すると考えられ、その病態的な意義や疾患バイオマーカーとしての意義についても検討を行っている。
|