研究実績の概要 |
本研究では、1)感染による急性炎症は、サイトカインストームを介して炎症性合併症を悪化させるか、2)日本食食品因子(大麦、EPA)は、糖尿病-感染性サイトカインストームによる炎症性合併症の悪化を抑制するかについて、胚環境操作モデルMEMマウスを用いて研究を行った。1)では、MEMマウスへのLPS投与後48時間以内の死亡率は、LPS非投与群と比較して約30% (vs. 0%)であることが確認され、眼病変においては通常培地KSOM培地由来の対照群と比較して、約55%の病変(vs. 36%)が観察された。また、胚環境・栄養環境操作による糖尿病自然発症モデルMEMマウスへ炎症惹起物質LPSを低濃度で投与することで、血中IL1BやMCP1などの炎症性サイトカイン発現の遺伝子発現増大が確認され、サイトカインストームを発症する動物モデルになることを確認した。 2)では、1)で決定した低濃度LPSを用いて行った。EPAを前投与された後に低濃度LPSを投与されたMEMマウスにおける、LPS投与後48時間以内の死亡率は0であり、LPS投与後6時間、24時間では病変がEPA非投与MEMマウスと同等レベルで見られたが、48時間では病変率が低下し、病態が回復していることが示された。このEPA投与MEMマウスでは、LPS投与後48時間において、末梢血の炎症性サイトカインであるs100a10遺伝子発現がEPA非投与群と比較して低減することが観察された。肝臓においては、炎症性サイトカインIl1b, Il18, s100a10遺伝子発現がEPA非投与群と比較して減弱し、Caspase, s100a4, s100a8遺伝子発現は減弱傾向を示した。加えて、EPA非投与群と比較して、ROS産生関連遺伝子Nox4, p22phox発現が抑制、ROS除去関連遺伝子Mpo, Cat発現が増大したことが明らかになった。
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