本研究では、新規脂肪酸受容体GPR164の生体恒常性維持に対する機能を明らかにするため検討を行った。これまで、GPR164はインスリン分泌や食行動に関わる腸管ホルモンの分泌に関与するとの報告があったことから、生体内でも特に腸管に着目し、腸管の機能に対するGPR164の機能解析を行った。初年度においては、GPR164遺伝子欠損マウスを用いて、腸管の形態観察や腸管ホルモンの分泌量を測定するなど、生体内におけるGPR164の機能について解析を行った。また、in vitroの系においては、CRISPR-Cas9システムによりGPR164遺伝子を欠損したCaco-2細胞を作製し、経上皮電気抵抗値(TER)を測定することにより、腸管バリア機能の評価を行った。このように、in vivo、in vitroの両面から解析することにより、GPR164の腸管における機能を明らかにすることが出来た。特に、GPR164遺伝子欠損マウスを用いた報告はこれまでにないことから、生体内でのGPR164の機能を明らかにできたという点において、非常に意義深いと考える。次年度においては、腸管で見られた形態の変化や腸管バリア機能及び腸管ホルモン分泌に対する影響が、どのような分子機構によりもたらされたのか、を明らかにするため検討を行った。まず、GPR164遺伝子の欠損が遺伝子の発現に与える影響を調べるため、RNAseqを行った。RNAseqで得られたデータをもとにKEGGパスウェイ解析を行ったところ、GPR164遺伝子欠損マウスで変化するシグナル伝達経路を特定することができた。本経路は、腸管でみられる形態異常を説明できる可能性が大いにあることから、本経路の阻害剤を用いた検討を行い、GPR164が腸管の恒常性維持に重要な因子であることを明らかにするに至った。以上より、2年という研究期間ではあるが、生体における機能が未知であった新規脂肪酸受容体GPR164の機能の一端を明らかにすることができ、満足のいく研究成果が得られたと考えている。
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