研究課題/領域番号 |
22K21237
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井上 貴博 新潟大学, 脳研究所, 助教 (20964521)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | 神経回路 / 皮質脊髄路 / 抑制性ニューロン / 神経活動 |
研究実績の概要 |
本研究では、神経活動の制御を担う抑制性GABAニューロンが、脳卒中後の皮質脊髄路再編へもたらす作用とその機序を統合的に解明することを目的としている。脳卒中による神経回路の破綻は、運動機能障害をはじめとするさまざまな機能障害をもたらす。しかしながら、成体の中枢神経は再生能に乏しく、根本的な治療法は確立していない。一方で、障害を逃れて残存した神経回路の可塑的変化は、失われた機能の代償や回復に寄与することが近年明らかになりつつある。とりわけ、随意運動をになう皮質脊髄路の再編は、運動機能の回復を支える神経機序の1つである。再編を促す上で神経活動は重要であると考えられており、本研究では大脳皮質の抑制性GABAニューロンに着目し、皮質脊髄路再編における抑制性回路の制御機構について解明を試みる。 本年度は健常マウスを対象に、①抑制性GABAニューロン特異的な標識と操作、②皮質脊髄路の神経活動計測の2点に着手し、それぞれの実験系を確立することに成功した。以上の方法を用いて、抑制性GABAニューロンの操作を行ったところ、皮質脊髄路の活動が変化する様子を経時的に捉えることができた。さらに、各回路に異なる色の蛍光タンパク質を発現させて標識することにより回路網の接続様式の組織学的観察も可能となった。ここまでに得られた成果は、抑制性回路による皮質脊髄路の活動制御機構の理解へつながるものと期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で必要な回路操作や活動計測に関する実験系が確立し、今後の仮説検証に必要な基礎データの取得が完了した。次のステップとして脳梗塞モデルマウスでの効果検証を行う準備も整っており、本研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に確立した抑制性GABAニューロン特異的な操作手法を脳梗塞モデルマウスへと応用し、障害後の皮質脊髄路の再編に与える影響を検証する。また、回路再編時の分子基盤や脳内の回路変化についても調べ、再編機序の統合的理解を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
神経回路の活動計測について、新たな計測機器を導入することなく所有済の機器で実験系を確立することができた。これにより、本研究を発展させることができる見通しが立ったため、次年度に顕微鏡機能を拡張し回路の微細構造の理解の精度をさらに高める必要性が生じた。以上の理由から、一部計画を変更し次年度への使用額が生じた。
|