本研究の目的は、マンモグラムを入力としたデータ診断AIによって乳がんの成長予測を行い、検診の受診勧奨を行う最適化システムを開発することである。 本年度は、昨年度に引き続き、乳がんの成長を予測するための因子として乳腺領域の濃度の上昇に着目し、正常症例のマンモグラムを入力とした乳腺量を推定するAIの開発を行い、その成果を論文にまとめた。 また、構築したデータベースにおいて、本AIを用いた乳がんの早期発見、検診の受診勧奨を行うための臨床評価を行い、その成果を論文にまとめた。乳がん症例の中には、マンモグラフィ検査では所見なしもしくは良性と判断された症例だが、超音波検査にてがんが発見された症例(Non-visible乳がん症例)も報告されている。そこで、AIから推定した乳腺量を用いて、Non-visible乳がん患者を推定する因子を特定した。このNon-visible患者へは、マンモグラフィ検査に加え、超音波検査を行うことで早期に乳がんが発見できると考えている。本研究で特定された因子に基づいて、マンモグラフィ検査+超音波検査の受診勧奨を行うことで、乳がんの早期発見、死亡率減少に寄与できることが示された。 研究期間全体を通して、マンモグラムおよび臨床データのデータベース構築、乳がんの成長予測AIアルゴリズムの構築と本AIを用いた乳がんの成長予測を確認するための臨床評価を実施し、検診の受診勧奨を行うべき因子の特定を行い、2本の論文にまとめることができた。同時に、製品化された乳腺量解析アプリケーションを医師が用いた際の有効性評価も実施し、どの程度の精度であれば臨床的な有効性が得られるかの知見を得ることができた。乳がんの成長予測を行うAIシステムや、アプリケーションの有効性評価については、国際学会にて発表することができた。
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