研究課題/領域番号 |
22K21255
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
水田 直道 日本福祉大学, 健康科学部, 助教 (30962766)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 歩行 / 筋シナジー / 運動制御 / 脳卒中 / 神経メカニズム |
研究実績の概要 |
ヒトの歩行では,筋シナジーの働きを用いて運動を低次元化し制御していることが分かっている.多くの脳卒中患者では,歩行時の筋シナジー制御に不全がみられ,これが歩行能力に影響を及ぼす.本研究では,脳卒中患者の筋シナジーにおける中枢神経系の機能局在やメカニズムを解明することを目的とする.そのため,経頭蓋直流電気刺激装置を用い,歩行時の大脳皮質運動関連領野の興奮性と筋シナジーについて検証した. 令和5年度は,データ収集を中心に実施した.脳卒中患者15名を対象に,歩行時の運動学的変数と筋電図学的変数を記録した.損傷側一次運動野上に経頭蓋直流電気刺激装置を用いて20分間刺激を行い,運動関連領野の興奮性を変調した.対象者は経頭蓋直流電気刺激群と偽刺激群(Sham群)にランダムに振り分け,両群とも刺激前後に歩行評価を行った.筋シナジーは,麻痺側下肢8筋の時系列データに非負値行列因子分解を適用し抽出した. 刺激前後での筋シナジー数は両群で変化がなかった.一方,刺激群では遊脚期の筋シナジーの重み付けが増大した.これにより,損傷側一次運動野を含む運動関連領野は,歩行時の筋シナジー構成全般ではなく,特に遊脚期の筋シナジー構成に関与していることが示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は機器の故障がありデータ収集・解析にやや遅れが生じた.データ解析に必要なMATLABを用いたプログラミングは完成しており,運動学的データや筋電図データの解析は順調に進んでいる.
経頭蓋直流電気刺激前後で皮質脊髄路興奮性が増大していないケースが確認されており,皮質脊髄路興奮性が増大/減少している群に分けて分析する必要性が明らかになった. 刺激群では遊脚期の筋シナジーの重み付けが増大ししており,運動関連領野は歩行時における特に遊脚期の筋シナジー特異的に制御している可能性がある. 最終年度の令和6年度に研究成果をまとめ、学術誌および学術集会で発表する準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,研究環境が整備され,データ収集とデータ解析を進めた.損傷側一次運動野を含む運動関連領野は,歩行時の筋シナジー構成全般ではなく,特に遊脚期の筋シナジー構成に関与していることが示唆された.引き続き,亜急性期脳卒中患者の歩行データの解析を進める予定である.また,脳卒中患者の病巣解析を行い,筋シナジーの構成と制御不全に特徴的な病巣位置の特定を試みる.さらに,経頭蓋直流電気刺激に対する反応性の大小に着目し,これに影響を与える歩行特性や臨床評価特性を調査する.最終年度の令和6年度に研究成果をまとめ、学術誌および学術集会で発表する準備を進めていく.
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