研究課題/領域番号 |
22K21273
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
三重野 琢也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (60953388)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 文字列アルゴリズム / ユニーク部分文字列 / 回文 / 動的文字列 |
研究実績の概要 |
本研究は、動的に変化する文字列データを効率的に処理するのためのアルゴリズム技法を開発すること、およびそれに資する文字列構造の数理的性質を解明することが目的である。 文字列中にちょうど一度だけ出現する部分文字列をユニーク部分文字列と呼ぶ。今年度は、動的に変化する文字列におけるユニーク部分文字列の変化に関する研究を主として行った。 まず、ユニーク部分文字列でありかつ回文構造でもある、ユニーク回文部分文字列に着目をした。そして、文字列中の任意の一文字を別の文字に置換したときのユニーク回文部分文字列の変化についての研究に取り組み、組合せ的性質に関する新たな知見を発見し、それに基づく効率的な文字列処理アルゴリズムを開発した。得られた成果を論文にまとめ、国際論文誌 Algorithmica へ投稿した。なお、投稿した論文の査読結果は年度末時点で未達である。 さらに、回文部分文字列の研究に関連して、動的文字列上での最長回文計算のために利用できる部分問題の高速解法の探求および一般化に取り組んだ。このテーマについては、既存結果からの改善と、一般化した問題の定式化および効率的な解法の開発をすでに実施しており、現在はその成果を国際論文誌 Theoretical Computer Science へ投稿する準備を行っている。次年度の序盤に、まずこちらの論文投稿作業を完了させる予定である。 また、12月にソウル(韓国)で開催された国際会議 ISAAC 2022 へ参加し、計算機科学分野全般の最新動向や各種アルゴリズム技術に関する情報収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、文字列編集時のユニーク回文部分文字列の変化についての成果を国際論文誌 Algorithmica へ投稿している。さらに、回文部分文字列に関する問題の高速解法の開発および問題の一般化に取り組み、その成果を国際論文誌 Theoretical Computer Science へ投稿する準備を実施中である。以上のように、令和4年度の約7ヶ月の研究期間における研究の進展は、おおむね順調であった。
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今後の研究の推進方策 |
前項にあるとおり、まずは国際論文誌 Theoretical Computer Science へ投稿予定の論文を完成させ投稿することが喫緊の課題である。また、動的文字列上のユニーク部分文字列計算のために有用なデータ構造である接尾辞木についての研究も現在推進しており、これについても国際論文誌への投稿を計画している。それらの論文執筆作業に際して、共同研究者との研究打ち合わせを合計2回実施する予定である。なお、打ち合わせの回数は議論の進捗状況によって柔軟に変化させる。 その後は事前の計画の通り、動的文字列上の極大一致ユニーク部分文字列計算問題と、動的文字列上の不在文字列計算問題に取り組む。前者の問題については、令和5年度中の国際会議への投稿と現地での口頭発表の実施を目指す。後者の問題については国内研究会での口頭発表の実施と、国際会議または国際論文誌への投稿を目指して研究を遂行する。これらの研究計画遂行のために、共同研究者との議論を目的とした国内出張を複数回行う予定である。また、関連する文献の購入や国内外の研究会への参加登録料などの必要経費を本助成金から支出する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付申請時には共同研究者との研究議論のための国内出張旅費を十分に計上していたが、想定よりも研究議論が順調に進んだことにより多くの成果を得るに至ったため、議論を目的とした国内出張の機会が少なくなった。また、令和4年度に得られた成果のほとんどは国際論文誌へ投稿することとなったため、国内外の研究会への参加回数が想定よりも少なくなった。以上の理由により、助成金の次年度使用が生じた。 次年度使用分については、令和5年度に開催される国内外の研究会で口頭発表を行うための旅費に充てる予定である。
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