研究課題/領域番号 |
22K21312
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐々木 航 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 助教(有期・研究奨励) (00964040)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | 感情推定 / モバイルセンシング / 情報伝染 / 情報フィルタリング |
研究実績の概要 |
本研究では、ユーザの感情状態に沿った情報フィルタリングをすることでユーザの心の健康を考慮した効果的な情報受容がすることを目的としている。そのために、まず感情状態推定モデルを構築する必要がある。本年度では、130人の大学生の1ヶ月間によるデータ収集実験を実施した。10種類のモバイルセンサと主観的感情状態ラベルを収集可能なiOSアプリケーションの実装およびデータ収集サーバを構築した。この実装したアプリケーションを学生が所有するiPhoneにインストールして、1日に最大で6回、現在の感情状態を問う通知を送信してデータ収集を実施した。また、センサーデータに関しては、バックグラウンドで持続的に収集した。 それらの収集されたデータを解析し、感情状態推定モデルを構築した。感情状態推定モデルでは、Russelが提唱した感情次元モデルを参考にしたvalence, arousalという2軸についての状態を推定する。valenceはポジティブ-ネガティブを示し、arousalは活性-不活性を示す。本研究では、それぞれの軸に対して推定モデル(valence推定モデル、arousal推定モデル)を構築した。 次に、本研究ではユーザの感情状態に合わせた情報フィルタリングシステムを構築する。本システムは、SNSなどユーザが日々触れ合うシステムには、ユーザにネガティブな影響を与えうる情報が人格形成過程途中の青少年やメンタルの病を抱えた人にでさえ,そのままの形で受容されてしまうという問題点に対して、ユーザの感情状態に従って、ネガティブな情報をフィルタリングすることを提案する。今年度はシステム設計を実施し、ユーザの推定感情とSNSの投稿された文章から自然言語処理によって導かれる感情スコアの2値が与えられたとき、どの情報をフィルタリングするかを決定するアルゴリズムを決定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではユーザの感情状態に合わせた情報フィルタリングシステムを構築することを目的としている。そのシステムでは、ユーザの感情状態を推定する学習モデルが求められる。そこで、本年度では大学生130人の1ヶ月のデータ収集実験を実施することで、スマートフォンセンサデータと主観感情ラベルデータを収集した。それらのデータからユーザの感情状態を推定するAIモデルを構築することができた。 これらのことから概ね順調な進捗状況であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
ユーザの感情状態に合わせた情報フィルタリングシステムを構築するために、スマートフォンセンサデータから感情状態を推定するAIモデルを構築した。 今後の研究では、実際のシステムとしてiOSアプリケーションを実装する予定である。まず感情推定モデルをアプリケーションで活用できるようにモジュール化する。そして、Twitterを模倣したさまざまなテキスト情報が流れるタイムライン機能を実装し、タイムラインの投稿テキストデータから自然言語処理によって算出される感情スコアと推定感情値によって、データをフィルタリングする機能を構築する。データフィルタリングは本年度に決定した、ユーザの推定感情と各投稿の感情スコアの2値が与えられたときにどの情報をフィルタリングするかを決定するアルゴリズムに従って実行される。 そして、データフィルタリングアプリケーションを構築後に、実際に研究室内実験としてユーザにアプリケーションを使用してもらい、データフィルタリングの有無によるネットワーク情動伝染の影響の違いについて評価する予定である。実験被験者をフィルタリングせず何も操作されていないタイムラインを流すグループ,ネガティブ感情状態と推定された際にネガティブ判定された投稿をフィルタリングするグループの2群に分割し、各被験者に感情状態を記録してもらい、実験期間中の各グループ被験者の感情状態の推移を分析・比較することによって、ネガティブ感情状態のネットワーク情動伝染の抑制について評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に旅費を使用する予定があるため。シンガポールでのデータ収集実験を実施し、より汎用な感情推定モデルを構築する。 また、次年度では情報フィルタリングシステムを構築する際に複数人で実装する計画であり、人件費に当該助成金を使用する予定である。また、システム構築における、サーバおよびクライアント準備としても使用予定である。
|