研究課題/領域番号 |
22K21315
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
伊藤 優樹 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (70962017)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 感覚統合 / 視覚 / 聴覚 / スナネズミ / マウス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、視覚情報と聴覚情報を統合するメカニズムを解明することである。多くの動物は複数の感覚情報を脳内で統合し、周囲の環境を把握している。例えば、単独刺激に比べ視覚刺激と聴覚刺激を同時に提示することで、刺激に対する検出性能が向上し、反応時間も短くなる。しかし、どのように情報が統合され知覚及び行動に影響を及ぼしているかはいまだ明らかになっていない。本研究では行動と神経応答から視聴覚統合のメカニズムを明らかにしていく。 動物実験(スナネズミを対象)では、当該年度の研究により、これまで1領域からのみ神経活動を記録していた実験系の改良を行った。これにより視覚野及び聴覚野にテトロードを挿入し、各領域の神経活動を同時に記録することに成功した。さらに覚醒下での頭部固定条件でも2領域の同時記録ができている。また、広範囲の脳領域を計測できる光学イメージングを用いて、視覚、聴覚および視聴覚刺激を提示した際の脳活動を記録した。その結果、視覚野での活動量は視覚単独刺激に比べ、視聴覚刺激で強くなっていた。これは、視聴覚統合によって視覚野の活動が変調していることを示唆している。 さらにヒトを対象として、視聴覚統合によって引き起こされるダブルフラッシュ錯覚が生じる刺激条件を検討した。ダブルフラッシュ錯覚は聴覚情報が視知覚に影響を与える錯覚であるが、聴覚刺激を曖昧にすることで明瞭な視覚情報が聴知覚に影響を与えることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スナネズミを対象に、光学イメージングを用いて脳活動を可視化し、視聴覚統合が視覚野でも行われている可能性を明らかにした。また、視覚野と聴覚野の両方から同時に神経活動を計測する手法も確立した。これにより、視-聴覚間の神経活動を同時記録することで統合のメカニズムに迫ることができる。その一方で申請者自身の異動があったが、移動先の研究室においても、実験に必要な頭部固定オペラント条件づけを行うセットアップを立ち上げることに成功している。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者の異動に伴い、これまで対象としていたスナネズミの導入が難しいため、代わりにマウスを用いて研究を進めていく。すでにマウスを対象に頭部固定オペラント条件づけを立ち上げており、光学イメージングおよび神経活動記録を行う予定である。 また、ヒトを対象とした研究は、聴覚刺激のパラメータに注目して錯覚が生じる条件を引き続き検討していく。
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