ロボットの補助により人が本来遂行できない運動を遂行可能にすることが、運動スキルの獲得に効果をもたらすと期待されている。この実現には、単に補助により動かされるだけでなく、対象者自身も運動を試みる必要があり、運動を駆動する役割を持つ運動主体感、つまり「自分が運動を制御している」という感覚が運動補助時に伴う必要がある。本研究は、①運動補助が運動主体感を奪う可能性、②知識などの認知的手がかりにより、運動補助時でも運動主体感を与えることができる可能性の2点を検証する。本研究の達成は、運動補助時に運動主体感を自在に与え、拡張された運動を自身の能力として獲得させる技術の開発に貢献することが期待できる。 当該年度では、実験の実施と研究計画の拡張を主に進めた。まず、複数回の実験を実施し、これにより仮説に即した結果が得られた。また、その結果から、筋電図の計測を追加し、運動補助時の筋活動を評価することで、知見をさらに深められる可能性が示唆された。そのため、実験を中断し研究計画の見直しと拡張を図った。この研究計画の拡張に伴い、新たに倫理申請手続きを進めた。その後、新たな実験プログラムを作成し、これにより従来の実験に加えて筋電図の同時計測が可能となった。また、筋電図の解析プログラムを作成した。 今後は、作成したプログラムにて実験を再開しデータ取得を進める。最終的には、それらの成果を研究論文としてまとめ、国際学術誌への投稿や学会発表を行う予定である。
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