研究実績の概要 |
中和処理を不要とした金属リサイクルシステムの開発を目的に、強酸性条件下における耐酸性細菌の金属吸着量と、陽イオンの挙動変化の解明に取り組んだ。現在主に検討されているリサイクル技術では、強酸を用いて電子機器廃棄物から金属イオンを浸出し、中和処理によりpHを中性にしたのちに吸着材を用いた吸着処理を行った。 本研究では、中和処理を不要とするため、電子機器に多く含有される、Co, Cu, Li, Mn, Niの5種類の金属イオンを含む模擬金属浸出液 (pH 1.5) を対象として、細菌を用いた強酸性条件下での金属吸着を行った。通常、強酸性条件下では、水素イオンとの競合により、金属吸着能力が低下する。本研究では、中性条件で生育し、強酸性条件下で生存可能な耐酸性細菌に着目した。模擬金属浸出液に菌体を懸濁し、金属吸着処理を行った。処理前後の濃度変化から、5種類の金属の減少量と、溶液中に放出された陽イオンの挙動を解明した。 現時点で、金属吸着に伴い、複数の陽イオンが菌体から放出されること、その種類と濃度、挙動は菌株によって異なることが示された。これらの結果から、Priestia sp. Mn7株が、強酸性条件下での金属吸着に適していることが示唆された。上述の結果について、 Young Asian Biochemical Engineers Community (YABEC) 2022において公表した。 本研究の成果により、金属吸着タンパク質を活用した吸着材の開発に必要な材料である、強酸性条件下での金属回収に適した菌株および処理条件を選定した。 現在、高い金属吸着能力を示した菌株について、金属吸着原理を解明するため、SEM-EDXによる金属分布の可視化や、RNA-seqによる金属吸着タンパク質の特定に取り組んでいる。
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