一般的に微生物燃料電池の負極には炭素素材が使用されているが、金属系素材はほとんど利用されていない。これまでの研究により、炎酸化ステンレス鋼などの金属系素材が一般的に使用される炭素素材よりも高い出力が得られることを明らかにしている。本研究では、更なる出力向上を目指し、新規金属負極を開発するために、9種類の合金とそれらの炎酸化合金9個の計18個の負極について発電性能を評価した。その結果、FeとNiを主成分としたFeを多く含有する合金のInvar 42、Super invar、ステンレス鋼は炎酸化させることで出力が向上し、これらの合金は他の合金よりも出力密度が高くなることを明らかにした。また、Crを10%以上含有する炎酸化ステンレス鋼は最大出力密度283 mW/m2であったのに対し、Invar 42の最大出力密度は310 mW/m2となり、今回試験を行った合金の中で最も高い出力が得られることを明らかにした。Ni とCuを主成分としたCuを多く含有する合金のAdvanceやConstantanは炎酸化の有無に関係なく、最大電力密度が2~57 mW/m2となり、極めて出力が低かった。Coを比較的多く含有する合金のKovar は炎酸化された電極で最大出力密度192 mW/m2となった。Niを主成分とした合金のHastelloy C-276、Inconel X-750、78 permalloyは最大出力密度210~264 mW/m2となり、Feの含有量が6~13%であったが極端に出力が低下することはなかった。
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