本研究ではポリカプロラクトンネットワークの海洋生分解における架橋密度の影響を調査することを目的として研究を行った。本年度は、昨年度作製した架橋密度の異なる3種類のポリカプロラクトンネットワークのフィルムについて熱・力学物性および海洋生分解性の調査を行った。作製した3種類のフィルムについてDSC測定を行ったところ、ポリカプロラクトンのガラス転移点が-60~-53℃の範囲に見られ、ポリカプロラクトンの融点に由来する吸熱ピークが14℃~56℃の範囲に見られた。融点のエンタルピー変化から算出したポリカプロラクトンの結晶化度は、フィルムの架橋密度が低くなるほど増加する傾向がみられた。フィルムのDMA測定を行ったところ、tan δのピークが-60℃~-40℃付近にみられ、これはDSCでみられたガラス転移点の値と一致した。フィルムの引張試験を行ったところ、架橋密度が高く結晶化度が低いサンプルでは450~550%の高い破断点ひずみを示した一方、架橋密度が低いサンプルでは10%程度の低い破断点ひずみを示した。フィルムについてBOD法による海洋生分解性試験を行ったところ、フィルムの架橋密度が高くなるほど生分解度が高くなる傾向がみられた。本研究の成果は、星型ポリカプロラクトンオリゴマーの重合度を変えることで最終的に得られるポリマーネットワークの架橋密度を制御することができたという点と、ポリカプロラクトンネットワークのフィルムにおいて架橋密度が高くなるほどポリカプロラクトンの結晶化度が低下し生分解度が高くなる傾向を明らかにすることができたという点で重要である。
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