森林における光合成有効放射吸収割合(fAPAR)は、光合成生産量を推定するための重要な要因の一つである。リモートセンシング技術はfAPARの広域推定に利用される。その際に、森林の3次元構造と衛星センサが観測する反射率との関係を理解する必要がある。仮想的に再現した森林モデル(仮想森林)は、それらの推定モデル作成に利用される。本研究では、fAPAR推定に適した仮想森林作成手法の開発に取り組んだ。 2022年度は、山岳地帯を対象とした仮想森林の表現方法に取り組んだ。申請者はボクセルモデルを用いた反射率シミュレータ(Cnopy-level Reflectance Simulator:CSRS)を既に開発している。しかし、CSRSの有効性はこれまで平地でしか検証されてこなかった。そこで、CSRSに傾斜のパラメータを与え、より柔軟に地形に対応できるようにした。有効性は、仮想森林からシミュレートした反射率と衛星が観測した反射率を比較した。その結果、平地と同程度の有効性を確認することができた。 2023年度は、CSRSに入力するパラメータの改良に取り組んだ。1点目は葉の傾きである。葉の傾きの違いが、同一の樹冠形状をもつ樹木であってどの程度反射率が異なるかをシミュレートすることが可能とした。実際の森林を用いての精度検証は困難であるため、樹木モデルを生成できるソフトウェア(Blender)を用いて、葉の傾きが異なる樹木の3Dモデルを生成し、手法の検証に取り組んだ。2点目は針葉樹の表現方法である。ボクセルに透過率を与えることで対応を試みた。1点目と同様に生成した3Dモデルを用いて検証に取り組んだ。 これらの成果は、今後、衛星リモートセンシングを用いたfAPAR推定への貢献が期待される。
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