研究課題/領域番号 |
22K21343
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
染谷 隆夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90292755)
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研究分担者 |
松尾 豊 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30358014)
川原 圭博 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80401248)
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90271866)
岩部 美紀 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70392529)
横田 知之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30723481)
李 成薫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80873132)
福田 憲二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (40613766)
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研究期間 (年度) |
2022-12-20 – 2029-03-31
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キーワード | 電子デバイス / ウェアラブル / ヘルスケアIoT / 機械学習 / 生体信号計測 |
研究実績の概要 |
今年度は、全身e-skinの長期駆動に向けて、電力供給の検討を行った。まず、安全かつ体全体に適用可能なワイヤレス電力供給システムの開発に取り組んだ。具体的には、給電コイルの3次元配線パターンによる電磁波伝搬のシミュレーションを行い、人が着用した際に人体への電磁波曝露を抑制するための設計を行った。次に、全自動横編み機を用いて3次元のテキスタイル型プラットフォームを製造した。3次元コイルとして市販の伸縮導電糸を用い、服と同時にコイルの配線を編み込むことで、無線で電力を転送可能な全身e-skinを作製することに成功した。さらに、テキスタイル型コイルの導電性を高めるために、液体金属を活用したチューブ状の導電性配線を開発し、50以上のQ値が得られることを確かめた。液体金属の配線をテキスタイルe-skinに適用するために、トンネル型の配線部を設計し、全自動横横編み機で作製したe-skinに液体金属の配線を実装することに成功した。最終的に、国際安全基準に準拠しつつ、25%の無線転送効率を得ることに成功し、テキスタイル型コイルにより、数ワットの電力を無線で供給することができるようになった。また、高効率かつ安定な超柔軟有機太陽電池の開発にも取り組んだ。有機半導体活性層にアルゴンプラズマ処理を施すことで、ダメージを与えず正孔輸送層と有機半導体界面での接着強度を上昇させることに成功した。その結果、有機太陽電池の機械的耐久性と駆動安定性が劇的に向上し、1000回の繰り返し伸縮試験後に91.0%以上の変換効率、500分の連続駆動において89.3%以上の変換効率を保持できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は計画以上に進展している。本研究では、人間の生体情報を全身で高精度に計測し、かつフィードバック機能を有する全身のe-skinを実現することを目的としている。日常生活における生体情報を長期間計測するためには持続可能な手法で電子デバイスに電力を供給することは非常に重要である。今年度は、テキスタイル型のプラットフォームを用いて、無線で電力を供給する手法を提案し、実際に25%の高い無線転送効率を得ることに成功している。またテキスタイル配線の開発に取り組み、極めて導電性の高い配線の開発とテキスタイルへの実装に成功している。さらに、超薄型有機太陽電池において、機械的耐久性と長期安定性を大幅に向上させることに成功した。全身e-skinプラットフォームの開発に必須である電力供給の手法の提案に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、パーソナル・カスタマイズしたe-skinの実現に向けて、人の体型に合わせて設計し、全身の最適な位置にセンサを配置できるスマートテキスタイルの製造手法を開発する。体にジャストフィットし、装着時の負荷を格段に低減しつつ、皮膚との高い密着性を維持し、高精度の生体信号を計測することを目指す。各ユーザの体形に合わせ、デジタル設計し、3次元で製造するスマートテキスタイルを実現する。全身の生体情報を計測するために、全身のプラットフォームにセンサを配置するための手法を確立し、心電図や筋電図など、全身における生体電位を計測する。皮膚から取得した皮膚抵抗や脈拍,筋電位などの生体信号の解析を進め、血圧や酸素消費量など従来連続計測が出来なかった生体情報を推定するための検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナの影響で海外博士研究員の着任に遅れが生じた。また半導体不足による影響で、実験機器の発注を次年度にした。以上の理由により、次年度使用額が発生した。次年度は、新規に博士研究員を雇用し、繰越金を使用する。また研究を加速するため、本プロジェクト専用の計測機器(半導体パラメータアナライザや脈波計測用の無線読み出し回路など)を追加で購入する。TUMなどの海外の参画機関からの研究員を招へいし、東京で国際ワークショップを実施する。それに加え、若手サマーキャンプを開催し、若手研究者のネットワーク構築を支援する。
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