ルイス酸サイトによる二酸化炭素の活性化および塩基サイトによる芳香族C-H結合の活性化を“単一の固体触媒表面”にて両立し,フロン酸またはフルフラール誘導体へのカルボニル化反応を構築する.化石資源由来の水素・炭化水素を利用せず,二酸化炭素の非還元的変換反応にてバイオマス由来炭化水素を高付加価値中間体へと昇華させる固体触媒反応の構築は,次世代の代表的かつ重要なグリーンプロセスのひとつになる.典型的な両性金属酸化物のもつルイス酸塩基性をベースにして、二酸化炭素加圧下にて溶媒に溶かしたフロン酸を加熱して二酸化炭素の挿入反応を系統的に検討したところ,250℃以上の高温域にて僅かではあるが反応の進行を確認したが,その温度域では基質の分解が支配的となってしまい有効な反応系を構築できなかった.従来法では等量に近い炭酸セシウムを添加して反応を実施していたが,金属酸化物の添加によって炭酸塩の種類の拡張および触媒量における反応の進行を確認することができた.しかし真の意味での触媒反応と定義できるまでの直接的な証拠を得ることはできなかった.今後の検討として注目すべきことは,いくつかの金属酸化物表面に形成されている炭酸塩を本反応系の二酸化炭素源として利用する方策である.酸化セリウムや酸化ジルコニア,更には大部分の塩基性酸化物ではその表面塩基サイトが炭酸塩を固定化している.これらの塩基サイトは空気中に曝すだけで炭酸塩を形成してしまうため、それらの塩基サイトを触媒活性サイトとして利用することはできない.一方,本反応系のように二酸化炭素の活性化を必要とする反応では,そのような活性化された炭酸塩を利用する方法論が有望となる可能性が高い.研究当初からそのようなアプローチにも注目していたが,研究機関における系統的な検討により,その高い妥当性および将来性を再認識することができた.
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