研究課題/領域番号 |
21F51736
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小宮 敦樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (60371142)
|
研究分担者 |
LOMBARDI GIULIA 東北大学, 流体科学研究所, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2021-11-18 – 2024-03-31
|
キーワード | 弾性熱量効果 / 冷却機構 / 弾性体 / 熱交換 |
研究実績の概要 |
本研究では,環境発電の一つである弾性熱量効果を用いたエネルギーの有効利用が可能な冷却機器の実現を目指すことを目的としている.研究初年度は4カ月間と短いため,本研究の基礎部分となる「弾性体材料評価」および「作動流体の流動様相評価」に特化した研究を計画し,それらを実行した.「弾性体材料評価」においては,既存の伸縮実験装置をどのように利用できるかについて検討を行い,実験装置の改良製作を行った.既に他の研究で製作した実験装置を有効利用することで準備期間の短縮化を図ることから,この4カ月間で,目的の材票の疲労試験および温度変化が検知できるよう実験装置の改良を行った.これにより,次年度初頭から複数の弾性体チューブによる伸縮発熱吸熱実験を実施することが可能となった.次年度以降、弾性体に係る応力と温度変化の関係を実験的に評価していく. 一方,「作動流体の流動様相評価」については,数値シミュレーションを主とした研究を進めた.OpenFOAMによる弾性体チューブ内流動様相計算を行い,1サイクルの発熱/吸熱過程において壁面の温度境界層厚さおよびその時空間的変化を定性的に解析した.境界条件には実験から得られる熱流束の時間平均値を与え,本年度は特に数値シミュレーションコードの妥当性について検討を行った.実際の系では流量,流れ方向,発熱量,チューブ径が時々刻々と変化するが,これら全てを考慮した計算コードの開発には4カ月では短いため,本年度はチューブ径と発熱量を固定し,流動様相の変化が伝熱形態に及ぼす影響についての評価を行った.本計算で得られた温度履歴を単一チューブの実験と比較した結果,定性的に良い一致が得られたことから計算の妥当性を評価し,次年度以降に固定した境界条件を実験のそれに置き換えることで定量評価に繋げていくこととした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画に照らし合わせて,本年度は概ね順調に進展していると判断することができる.本年度は目標として基礎部分となる「弾性体材料評価」および「作動流体の流動様相評価」を掲げたが,ともにほぼ計画通りに進展した.このうち「弾性体材料評価」においては,既存実験装置を再デザインし改良製作を行うことはできたが,具体的に天然ゴム応力負荷時の非一様と推定される温度勾配の評価とその過渡性について定量評価を行い,高効率に熱交換が実現できる弾性体の素材評価を行うまでには至らなかった.しかしながら実験装置はほぼ完成していることから,次年度直ちに実験を進めることが可能である.温度評価に関しては,非接触温度計測装置の校正をしなければならない.本研究のキーテクノロジーは弾性体変形時のエントロピー変化有効利用であるため,材料の評価指標となる負荷応力-温度変化の関係を擾乱の極力少ない環境にて実験的に明らかにしなければならない.そのために次年度に非接触式温度計を採用して,実験を進めていくこととする.また,流動様相評価においては,数値シミュレーションコードを概ね90%程完成させ,後は境界条件を決定するところまで到達している.こちらも次年度以降直ちに本格的なシミュレーションを実施することができる.以上をまとめると,次年度の研究につながる研究成果の取得であったと言えることができ,本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できる.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の進展がおおむね順調に進展したことから,次年度以降も研究計画は申請書の内容を維持しつつ,かつ本年度に準備を行ってきた実験装置製作と数値シミュレーションコードの開発の仮置きした点を進めていくこととする.「弾性体材料評価」においては次年度は初頭に非接触式温度計測システムを取り入れ,負荷応力-温度変化の関係を明らかにしていく.また,流動評価に関しては,本年度一定としていた境界条件を実験に合わせて時空間的に変動させ,実験結果との比較を行っていく.また,次年度は特に材料工学を専門とする海外研究者との連携を密にし,弾性体の物性評価を進めていく.これまではオンライン会議を軸に間欠的な議論を紡ぎ合わせての研究推進であったが,次年度以降はオンライン会議とオンサイトの会議を併用し,高性能を有する弾性体の選定を行っていく.
|