研究実績の概要 |
脱炭素循環型社会を構築するために、都市下水処理システムをエネルギー消費型施設から創エネ・低炭素型に変革することが求められ、新規嫌気性処理技術の開発が注目されている。一方、メタン発酵法による都市排水の創エネルギー型処理を行った後に、溶存性メタンとアンモニアが残留し、後続の適正処理が課題となっている。 R4年度の研究は創エネルギー型都市下水処理システムを確立するために、(1)下水処理場で嫌気性MBR法による都市下水の創エネルギー処理とアンモニア生成を検討したとともに、(2)後続の高度処理を行うための硝酸・亜硝酸呼吸型微生物の集積培養を行った。具体的には、研究(1)では、有機物変換と創エネルギー効果に焦点を絞り、下水処理場で20Lの嫌気性MBR反応装置を運転し、水質変換とバイオガス生成に及ぼす水理学的滞留時間の影響を把握した。また都市下水に含まれるSSやアルカリ度などの影響についても解析した。研究(2)では、後続の高度処理を行うための硝酸・亜硝酸呼吸型微生物の集積培養を行い、アンモニア濃度の影響を実験的に把握した。 R5年度の研究は (1)HAP促進型一槽式アナモックスPNAとPDA複合生物反応系の形成、(2)嫌気性MBRメタン発酵のろ液に含まれるアンモニア窒素の除去を行うための長期連続実験を行った。研究(1)では、HAP-PNAグラニュールの粒径は0.2-0.3mmであり、VSS濃度が9-10 g/Lに達したことで、超高負荷で運転できるアナモックス反応系の維持に成功した。また,炭酸カルシウム促進型PDAグラニュールの培養にも成功し、粒径1-4mmで沈殿性が優れ、活性も髙かった。研究(2)では、PNAとPDAの長期連続実験を通して、窒素除去率が99%に達成した。最終的にシステム全体の処理水質を把握したとともに、各ユニットにおける微生物群集構造や反応活性を明らかにした。
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