成体期に新たなニューロンが生まれる数少ない領域である海馬歯状回に注目し、これらのニューロンの長期的な動態を探るための研究を行った。既存のカルシウムイメージング技術では、長期間にわたるニューロンの追跡が難しいため、新たな解析ツールCaliAli(Calcium Imaging Intersession Alignment)を開発した。 CaliAliは、長期実験におけるカルシウム信号を効率的に追跡・抽出するための包括的な解析パイプラインである。このツールは、カルシウムイメージングで得られる血管および神経構造を強調するフィルターを使用し、脳の整合性を修正する。また、長期間にわたる記録から生のデータを分離する特別なプロセスも備えている。さらに、バッチ処理を用いることで計算負荷を大幅に削減しつつ、高い性能を維持している。 CaliAliを用いた実験では、成体生まれのニューロンが文脈記憶の獲得後の睡眠段階で再活性化することを初めて示すことに成功した。これにより、記憶の統合におけるREM睡眠の重要性を新たに証明した。この成果は、CaliAliがニューロン追跡の新たな標準を設定し、神経ネットワークの進化と適応を長期にわたって研究する上で重要なツールとなることを示している。CaliAliのコードと論文はプレプリントとして公開されており、現在査読中である。
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