研究課題
ヒトを含む哺乳類の睡眠は、レム睡眠(急速眼球運動睡眠)とノンレム睡眠から構成される。、レム睡眠は、その役割がほとんど分かっていない謎の多い状態である。本研究では、レム睡眠が脳の脈管系に与える影響に注目して研究を進めてきた。今年度は、マウスのレム睡眠時に大脳皮質の毛細血管血流が大幅に増加することを明らかにし、関与する受容体を同定したのに続き、このレム睡眠時の脳血流の増加の生理機能に着目した。近年の研究から、脳血流に伴う血管運動が老廃物のクリアランスのための原動力になっている可能性があることを踏まえ、睡眠中のマウスの脳内老廃物排出量を直接測定する実験的アプローチを確立してきた。まず、あらかじめ手術によって頭部観察窓(cranial window)を作製しておいたマウスにおいて、無麻酔下で脳波および筋電図の測定をしながら、2光子励起顕微鏡下での生体内イメージングを行った。これにより、睡眠中のマウスの脳内の老廃物の排出を直接観察した。その際には、蛍光トレーサーの挙動に注目した。続いて、あらかじめ手術によって頭部にカニューラを取り付けたマウスにおいて、睡眠中の脳脊髄液のクリアランスの計測をトレーサー注入実験により実施した。その際には、トレーサーの注入自体がマウスの睡眠構築に影響を与えるという困難に当初直面したが、条件検討を重ねることで、克服することができた。なお、本研究の結果の一部は、Tsai Chia-Jung博士によって神経科学の国際学会(北米神経科学学会・Society for Neuroscience)で発表した。
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すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)