研究課題/領域番号 |
22F20403
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
受入研究者 |
津田 吉晃 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40769270)
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外国人特別研究員 |
SEN SANDEEP 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | クロコショウ / 保全ゲノミクス / 西ガーツ山脈 / 最終氷期最盛期 / 遺伝構造 / 集団動態 |
研究実績の概要 |
インド西ガーツ山脈を起源とし、世界で一番価値のある香辛料とされるクロコショウ栽培種の野生種について、西ガーツ山脈から網羅的に採取した個体を対象に母性遺伝する葉緑体DNAおよび両性遺伝する核DNAの多型検出により、その遺伝的多様性、遺伝構造、集団動態の評価を行った。その結果、遺伝的多様性と緯度、経度には有意な相関はないものの、地域により遺伝的多様性が高い地域があることを明らかにした。また西ガーツ山脈全体から大きく南北に分かれる2つの系統を検出し、最終氷期最盛期に西ガーツ山脈の北部と南部に2つの逃避地があったことを先行研究(Bodare, Tsuda et al.2013)も考慮しながら考察した。この考察をより深く精査するために、移住率を考慮した改変種分布モデルを用いて、最終氷期最盛期の分布適地・逃避地を推定し、現在までの分布に至る過程について評価し、遺伝データから推定した集団動態の歴史との関係を詳細に評価した。これら成果をまとめ、査読付国際誌への投稿原稿執筆も進めた。これら結果を受けて、クロコショウ2個体については全ゲノムシークエンスを行い、そのために必要なバイオインフォマティクスのスキル習得を行った。それをもってデータ解析を進めたが、1個体についてはDNAの質の問題もあり、うまくデータ取得できなかった。もう1個体についてはデータ取得できたが、DNAの質の問題で当初期待していたほどは大量データ取得できず、より質の高いDNAの抽出が課題となった。しかし、公開されているクロコショウのレファレンス・ゲノム情報も用いることで、当初の想定量よりは少なくなったが、西ガーツ山脈起源のクロコショウのゲノム多型情報を収集することはできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉緑体DNA、核DNAを対象した多型マーカーを用いた多検体のデータからは、対象個体の遺伝構造評価に資する成果を得ることができた。またこれらデータの解析法について、Sen氏が主体的に情報収集やスキル向上を目指し、研究は順調に進捗したため。過去~現在の分布変遷を推定する改変種分布モデルについても、モデル開発研究者であるスイス連邦森林雪氷景観研究所・Michael Nobis博士の協力のもと、これまでの議論されてこなかったような分布モデル推定を可能とするアプローチに着手できたため。インド側共同研究者らとも潤滑に成果についての情報共有することができ、研究促進につながった。全ゲノムシークエンスについてはDNAの質の問題があったが、インドの前所属機関に一時帰国し、翌年度研究に向けてサンプル再整理を行うなど、全体として、研究は順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
成果の国際誌への発表を目指し、核DNAおよび葉緑体DNAの多型データの最終解析・まとめを行う。そのために、過去~現在の分布変遷を推定する改変種分布モデルを遺伝的多様性の観察値と比較検証できる手法の開発を、モデル開発研究者であるスイス連邦森林雪氷景観研究所・Michael Nobis博士の協力のもと行う。全ゲノムシークエンスデータの解析を進め、追加サンプルの検討などを行うとともに、低収量DNAでも対応できるゲノムワイドな縮約ゲノムDNA多型検出法の供試について検討を進め、データ取得を行う、集団ゲノミクス解析を進める。これにより、国際誌2報目のデータ整理および投稿原稿準備を進める。
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