研究課題/領域番号 |
22F20314
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣瀬 敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50270921)
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研究分担者 |
FU SUYU 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 酸化鉄 / 最下部マントル / コア / 融解温度 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンドセル装置を用いた超高圧実験を行い、スプリングエイトにおける放射光エックス線回折測定を基にFeOの融解曲線を決定することに成功した。FeOは、マントルとコアの両方の重要な成分である。 関連する高圧および高温条件での FeO の融解挙動と物理的特性を理解することは、地球内部の化学と物理を調査するために重要である。 FeO の融解に関する過去の研究のほとんどは、地球のコアおよびマントル最深部の圧力よりもはるかに低い 90 万気圧以下で行われてきたに過ぎない。 この研究では、シンクロトロンX線回折技術と組み合わせたダイヤモンドアンビルセルを使用して、最大186 万気圧のレーザー加熱溶融実験を実施した。 100 万気圧 を超える FeO の融解温度は、これまでの結果を外挿した温度よりもはるかに低く、200 万気圧 で最大 900 K の差があることがわかった。 また高圧高温下で得られた体積データは、B1 構造の FeO中で高スピンから低スピンへのクロスオーバーが発生し、最大 2% の体積減少を引き起こす可能性があることを示唆している。 構築された高圧の MgO-FeO 状態図は、Feに富む (Mg,Fe)O の固相線が FeO の融解温度に近いことを示す。 FeO の低い融解温度は、(Mg,Fe)O がマントルの底部近くに存在する場合、固体ではなく部分融解物質になっている可能性が高いことを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着任して初年度にFeOの融解実験を超高圧下まで行い、論文を投稿した。FeOは下部マントルの主要元素のうち最も低融点成分であり、最下部マントルの融解や地震波速度異常の原因を理解する上で重要な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、下部マントルの主要鉱物ブリッジマナイトを行い、最下部マントルの融解に伴う元素分別を理解する。コア直上で、ブリッジマナイトを主体とするマントルが融解するかどうかは、コアの温度次第である。コア最上部の温度の推定値は現状で1000度以上の幅があり、コアの温度の推定も極めて重要である。近年の研究により、コアの軽元素として水素が重要と考えられている。ゆえに、今年度はFe-H合金の融解実験も行い、そのリキダス相関係と融解温度の決定も目指す。ブリッジマナイトの実験は東大で135万気圧まで、Fe-H合金の実験は放射光施設スプリングエイトで200万気圧以上まで行う。Fe-H合金中の水素量はエックス線回折測定から決定する必要がある。
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