研究課題/領域番号 |
22KF0094
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辻 雄 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (40252530)
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研究分担者 |
ABHINANDAN 東京大学, 大学院数理科学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 相対Wach加群 / 整p進表現 / クリスタリン表現 / p進消滅サイクル / prismaticクリスタル |
研究実績の概要 |
2022年度の研究において,剰余体が完全で絶対不分岐なp進整数環上のsmooth 環の生成ファイバーの基本群の整p進表現に関して,相対Wach加群の圏とクリスタリン表現の格子の圏の圏同値を示していた.基本群のクリスタリン表現はfiltrationとFrobenius構造をもつ接続付き加群の圏への忠実充満関手をもつ.この関手を相対Wach加群により記述する問題を解決し,この新しい結果も含めて論文を完成させた.絶対prismatic Fクリスタルの圏とクリスタリン表現の格子の圏の圏同値が,二つの研究グループにより最近証明され論文が公開されている.相対Wach加群への群Γの作用から,対応する絶対prismatic Fクリスタルを与えるstratificationを直接構成できるかは基本的な問題であり,2022年度に関連する興味深い観察を得ていた.この観察では従来の接続を用いていたが,そのある種のq変形を巧妙に構成することにより,stratificationの直接構成に成功し,その論文の初稿を完成させた.p進消滅サイクルとsyntomic複体のsmoothスキーム上での大域的比較を,prismaticクリスタルとそれに伴うq接続,qHiggs場および局所Ainfコホモロジーを用いて行う研究も進めた.2022年度に直面していた局所Ainfコホモロジーとq-de Rham複体のNygaard filtrationの比較の問題は,適当な次数の切り捨てのもと容易に解決できることが明らかになった.一方クリスタリン表現の格子に対応する相対Wach加群の底加群は一般に局所自由でないため,対応する相対BKF加群をpro-etale site上でうまく扱えないことが判明した.代わりにFaltings siteを用いてp進消滅サイクルの局所Ainfコホモロジーを用いた記述の研究を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相対Wach加群の圏と基本群のクリスタリン表現の格子の圏の圏同値とその基本性質の研究は.論文執筆も含め完成し現在論文を投稿中である.この研究は当初の計画通り進んだといえる.また相対Wach加群からの絶対prismatic Fクリスタルの構成問題は,受け入れ研究者によるq接続,qHiggs束と相対prismaticクリスタルの研究で用いた手法が適用できず,独自の工夫によりその解決法を与えた点は,絶対prismatic Fクリスタルに対する新たなアプローチを与える大きな進展であった.p進消滅サイクルの研究は,2022年度に直面していた局所Ainfコホモロジーとq-de Rham複体のNygaard filtrationの比較の問題が解決したことにより,2023年度は,加群の非局所自由性に起因する種々の技術的困難はあったもの,着実に研究が進展した.
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今後の研究の推進方策 |
p進消滅サイクルとsyntomic複体の比較の研究を継続する.相対Wach 加群の底加群が局所自由でないため,p進消滅サイクルの局所Ainfコホモロジーを用いた記述の研究の各ステップにおいて,種々の技術的困難が現れているが,着実に解決しつつある.この報告を記述している5月時点でp進消滅サイクルの局所Ainfコホモロジーを用いた記述はほぼ完成している.研究員滞在が終了する6月末までに,この記述とprismatic syntomic複体の大域的比較を完成させる.もし余裕があれば,さらにprismatic syntomic複体と従来のcrystalline syntomic複体の比較も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況に合わせて図書の購入を予定していたが,研究の内容から翌年度に購入するのが適当となった.
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