研究課題/領域番号 |
22F22013
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
受入研究者 |
相川 祐理 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40324909)
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外国人特別研究員 |
MOLPECERES DE DIEGO GERMAN 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-09-28 – 2024-03-31
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キーワード | アストロケミストリー / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,星間氷上の化学反応による有機分子の生成,特に極性氷(H2O)と非極性氷(CO)表面での有機分子生成効率の違いを明らかにすることである.しかしそのためには,氷表面での様々な物理化学過程を調べる必要がある.そこで本年度は下記の2つの課題に取り組んだ.これらは,本研究の主課題への準備として有用であるだけでなく,近年観測,注目されている星間分子の反応過程の理解に重要な示唆を与える. NH2OHは星間分子のうち生命前駆体となり得る分子である.従来の化学反応ネットワークモデルではこの分子は星間雲で比較的豊富に存在すると予想されていたが,最近の観測で初めて検出され,その存在量は予想よりも桁違いに低かった.そこで本研究では,氷表面でのNH2OHの破壊反応を量子化学計算によって調べた.その結果,NH2OHおよびその前駆体に対するH, O,N原子による水素引き抜き反応がNH2OH生成の妨げおよび破壊に大きな役割を果たすことが分かった. 低温な星間氷表面での化学反応において,生じた反応熱が周囲の氷分子および反応生成物にどのように分配されるのかは,生成分子の気相への脱離率や氷表面の拡散率に直結する.本研究では氷表面でのP+H--> PHの反応について機械学習で作成した原子間力を用いてab initio分子動力学計算を行った.その結果,反応後50ps以内に反応熱の50-70%が散逸すること,反応生成物(PH)のもつ運動エネルギーはほとんどの場合,反応熱の1-5%であることが分かった.また重い同位体(PD)の場合はよりエネルギー散逸が大きいことも分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示した研究結果を2本の学術論文にまとめ,掲載決定となった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主課題であるH2O氷表面とCO氷表面での有機分子生成効率の違いを調べる.そのために必要なCO氷モデル作成にはすでに着手している.
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