研究課題/領域番号 |
22KF0127
|
配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
|
研究分担者 |
SCHIMKOWSKY CHRISTOPH 東京大学, 社会科学研究所, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
キーワード | 乗車マナー / 学際的研究 / 社会学 / 人類学 / 歴史学 / 都市鉄道 / 公共交通 / 日常生活 |
研究実績の概要 |
この研究プロジェクトは、都市鉄道における乗客の行動・マナーと、それを形成するための交通機関や政府の取り組みそしてそれらの歴史的変遷を扱うものである。前年度は、主に東京の公共交通機関の発達や乗客の行動に関する歴史的な資料を業界誌などから収集し、分析した。その資料をもとに主に二つのテーマについて焦点を当て、二本の論文にまとめ、首都圏における「整列乗車」の誕生についての論文と東京の都市交通における乗車体験をよくする鉄道会社による取り組みの戦後歴史についての論文にまとめ、いずれもMobilitiesという国際学術雑誌に投稿した(両方とも現在、査読中)。 また本プロジェクトは歴史学と人類学の研究手法を組み合わせることを目的としているため、現代の乗客の体験や慣行についても調査を行った。具体的には、昨年実施したインタビューと専門家の言説分析に基づき、コロナ禍における公衆衛生広報と予防対策における東京の通勤電車の位置づけについて論文を執筆し、Asian Anthropology誌に投稿した(現在、査読中)。 さらに公共都市空間における行動に関する上記の実証的研究によって得られた洞察に基づき、デンマークの研究者と共同で、「整列」の実践を社会学的見地から分析した概念的な論文を執筆し、Applied Mobilities誌に投稿した(現在、査読中)。 最後に、本研究の広報活動も行った。具体的には2023年9月21日に、ラジオ局「Dubai Eye」の番組「The Agenda」で、生放送で自分の研究についてインタビューを受けた。また、「JSPSサイエンス・ダイアローグ」の一環として、静岡の高校で講義を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は国際的な学術誌に4本の論文を投稿することができ、おおむね順調に進展している。さらに、同じような研究関心を持つ何人かの日本人研究者と知り合うことができ、今年後半には彼らの大学や学会で講演をすることになった(鉄道史学会及び立教大学において研究発表予定)。また、データ収集(主に古い業界誌や新聞報道を対象に)も続け、京都鉄道博物館の副館長と学芸員の2名に専門家インタビューを行った。これらのデータは今年の分析の貴重な研究材料になるであろう。
|
今後の研究の推進方策 |
フェローシップが終わるまで資料集めを続け、それをもとにさらに論文原稿を準備する。現在は、ミュンヘン大学の研究者とともに、東京の都市空間および公共交通空間におけるコロナ禍における経験に関する共著論文を準備中である。また、研究成果を共有し、新たなつながりを育むために、任期終了までにさらにいくつかの学会に参加する予定である。例えば7月末にインドネシアで開催される予定の『International Convention of Asia Scholars』で研究発表し、9月23-25日にドイツで開催される予定の『International Association for the History of Transport, Traffic and Mobility』で日本で知り合った研究者と一緒にパネルを組んで研究発表する予定である。 また、5月末にはデンマークのワークショップで発表し、6月にはミュンヘン大学で特別講義を行う予定である。
|