研究課題/領域番号 |
21F40376
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石井 秀明 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (50376612)
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研究分担者 |
YAN JIAQI 東京工業大学, 情報理工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-09-28 – 2024-03-31
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キーワード | 制御システム / 分散アルゴリズム / サイバーセキュリティ / 合意問題 |
研究実績の概要 |
本研究では,マルチエージェントシステムにおけるレジリエント合意の問題に取り組む,とくにシステムがデータ改ざん攻撃を受け,一部エージェントが異常もしくは悪意のある行動を取った場合に対してロバストな合意アルゴリズムの高度化を図る.本年度は2年目であったが,レジリエントな分散アルゴリズムに関する研究を本格的に進め,主に以下の課題に取り組んだ. 1. 分散型カルマンフィルタにおける通信量の低減化:イベントベースの通信を用いることで必要時にのみエージェント間の情報交換を行う.従来法と異なる点として,カルマンフィルタの分散化にあたり状態推定と推定状態に関する合意の両アルゴリズムを切り分け,情報の流れを効率化することに成功した. 2. 振動子モデルに基づくセンサネットワークの時刻同期問題:異常なノードが一定数ネットワークに含まれる場合に対してレジリエントに時刻同期を達成するアルゴリズムを導出した.エージェント間の情報交換はパルス型通信を用い,個々のエージェントの自然各周波数が異なる場合を扱った. 3. センサネットワークによる分散型パラメータ推定問題:各センサは未知パラメータに関する計測値を得るが,センサ間で通信を介することで協調してパラメータの真値を推定することを目指す.多次元のシステムを扱うが,DREM (dynamic regressor extension and mixing) アルゴリズムを適用することでスカラ系の推定問題に帰着させることで,レジリエント合意の手法が適用可能となった.前年度より検討している,雑音を含む場合に対するパラメータ推定についても継続して取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で目標としていた,レジリエントな分散アルゴリズムに関する研究に本格的に取り組み,一定程度の進展がみられた.上述の三つの研究課題について,いずれも国際会議や論文誌で発表するレベルの成果を得ている. 1. 分散型カルマンフィルタにおける通信量の低減化:7月にチューリッヒで開催された 9th IFAC Workshop on Networked Systems (NecSys'22)で発表を行った.Yan氏は若手優秀研究賞の最終候補者5名に選ばれた.論文投稿を進めている. 2. 振動子モデルに基づくセンサネットワークの時刻同期問題:理論的な結果をまとめ,発表のための準備を進めている. 3. センサネットワークによる分散型パラメータ推定問題:ネットワークに異常ノードを含む場合にタイするレジリエントな場合に対する結果は,制御分野でのトップの国際会議の一つである American Control Conference (5月)に投稿し,採録された.また,計測信号が確率的な雑音を含む場合に対して,真のパラメータへの平均二乗の意味での収束性を示す結果についても国際会議 IFAC World Congress (7月)に採録されており,発表予定である.双方とも論文誌への投稿も済ませている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり,7月には研究期間が終了するため,これまでの研究を仕上げることに注力するが,以下の課題にも引き続き取り組み,さらに進化させる. 1. 振動子モデルに基づくセンサネットワークの時刻同期問題に対してレジリエント合意手法の適用を考える.従来研究では主に線形なダイナミクスのエージェントを扱っていたが,その非線形システムへの拡張を図るのは有意義である.とくにエージェント間でパルス型通信を用いる場合を考え,個々のエージェントの自然各周波数が異なるケースを扱う.各エージェントの時計が連続的に変化することを目指す. 2. センサネットワークによる分散型パラメータ推定の問題を検討する.各センサは未知パラメータに関する計測値を得るが,センサ間で通信を介することで協調してパラメータの真値を推定することを目指す.とくにDREM (dynamic regressor extension and mixing) アルゴリズムを適用するが,従来研究では扱われていない確率的な観測雑音が含まれる場合を考える.またネットワーク構造が時間的に変動する場合を扱い,全ネットワークに対して必要となる持続励起 (persistent excitation) 条件を明らかにする. 3. 分散型カルマンフィルタに対するレジリエントな手法を開発する.各エージェントに異常検知のための機構を導入し,その性能向上のためにマルチホップ通信による情報交換を採用する.
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