研究課題/領域番号 |
22F22312
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
黒崎 卓 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90293159)
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研究分担者 |
KARAYAMPARAMBIL DEEPAK 一橋大学, 経済研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-11-16 – 2025-03-31
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キーワード | 農業生産性 / 価格政策 / 灌漑 / 稲作 / インド / ベトナム |
研究実績の概要 |
多くの開発途上国において、農業部門は雇用の中心であり、GDPに占める比率も高い。しかし途上国の農業部門は、先進国に比べて生産性が低く、それが経済成長の低迷や貧困の蔓延につながっている。生産性向上のために効果的な政策として、生産者価格支持などの価格要因と、灌漑などの公共投資などの価格外要因に着目し、それぞれが功を奏するのはどのような条件下においてなのか、両者の間の関係はどうなっているのかについて、インドとベトナムの稲作農業の比較分析を、それぞれの稲作先進地域に焦点を当てて開始した。具体的には、農業経済学への重要な貢献である故・速水佑次郎の誘発的技術革新の理論および農家主体均衡論に基づくモデルを応用し、価格・価格外要因の政策介入が生産技術や生産組織・制度に与える効果についての予測を導出し、比較実証研究の分析枠組みを確定させた。そのうえで、研究分担者が2021年までに実施したインド・ケーララ州のAdat地区およびベトナム・メコンデルタDinh Thanh地区の稲作農家調査のミクロデータに、その分析枠組みを適用した予備的分析結果をワーキングペーパーとして取りまとめた。この論文を2022年度内に2回報告し、予備的分析結果と今後の方向性についてのコメントを得た。第1回が、神戸大学経済経営研究所でのセミナーであり、両国の農業・農村経済を専門とした研究者に対して研究成果を披露した。第2回が、アジア農業経済学会の第11回国際会議の一般報告であり、世界中から集まった研究者から本研究に対する多くのコメントを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析枠組みについて、故・速水佑次郎の誘発的技術革新の理論と農家主体均衡論に基づくモデルを応用し、価格・価格外要因の政策介入が生産技術や生産組織・制度に与える効果についての予測を導出し、比較実証研究の分析枠組みを確定させることができた。この分析枠組みを、研究分担者が2021年までに実施したインド・ケーララ州のAdat地区およびベトナム・メコンデルタDinh Thanh地区の稲作農家調査のミクロデータに適用し、予備的分析結果をワーキングペーパーとして取りまとめた。この論文について2度、セミナーや国際会議で報告し、今後の方向性についての有益なコメントを得た。コメントを取り入れて、このワーキングペーパーを改訂した。他方、それぞれの調査地の再調査に関し、調査での焦点およびロジスティックス面でのアレンジを開始し、両国農業のマクロ統計についての吟味と、代表性を持つ大規模標本調査のミクロデータ分析をフィールド調査データと結合させるための作業に取り掛かった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に確定させた分析枠組みに基づき、2023年度には、インドとベトナムの稲作地域に焦点を当てた比較研究を、ミクロ・マクロの両レベルで実証的に進める。まず、一橋大学経済研究所にて構築中のアジア長期経済統計の成果を利用して、インドとベトナムのマクロデータに比較実証研究の分析枠組みを適用する予備的分析を行う。同時に、インドとベトナムにて、研究分担者によるミクロ調査地区を再訪問して集めるべき追加情報と、新たな調査地区の追加が必要かどうかについて確定させる。ベトナムについては、研究代表者と分担者ともに現地に出張し、追加調査をアレンジする。インドについては、既に十分な調査実施のネットワークを確立させていることから、分担者がオンラインで追加調査について指示する。これらに加えて、インドとベトナム両国で統計局等が収集した既存の大規模ミクロデータの収集と解析を進め、ミクロ調査一次データと比較する。まずは記述的分析を行い、分担者が2021年までに集めたフィールド調査データとの相関関係をチェックする。分析結果を別のワーキングペーパーにまとめ、開発経済学会や日本経済学会など、日本国内で報告する。 最終2024年度には、インドのミクロ調査が適切に行われたかの確認のための調査、および研究成果について在インド研究者との意見交換を行うために、研究代表者がインドに出張する。調査助手を雇用してデータクリーニングと記述的分析を完了させる。以上の過程を経て確定させたミクロ・マクロ両レベルのデータを用いて、比較実証研究の解析を完了させる。分析結果を複数の論文にとりまとめ、内外の学会で報告して改訂作業を進め、準備のできたものから順次査読付き英文ジャーナルに投稿する。分析結果の持つ政策含意をポリシーブリーフに取りまとめ、開発機関等に情報提供する。
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