研究課題/領域番号 |
22KF0145
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
黒崎 卓 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90293159)
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研究分担者 |
KARAYAMPARAMBIL DEEPAK 一橋大学, 経済研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 農業生産性 / 価格政策 / 灌漑 / 稲作 / インド / ベトナム |
研究実績の概要 |
多くの開発途上国経済を支える農業部門とそれが位置する農村部は、生産性の低さと、成長の低迷や貧困の蔓延の問題を抱えている。ベトナムとインドも例外ではない。本研究は、農業生産性向上のために効果的な政策として、生産者価格支持などの価格要因と、灌漑などの公共投資などの価格外要因に着目し、それぞれが功を奏するのはどのような条件下においてなのか、両者の間の関係はどうなっているのかについて、インドとベトナムの稲作農業の比較分析を、それぞれの稲作先進地域に焦点を当てて行う。プロジェクト第2年目の2023年度には、研究分担者が2021年までに実施したインド・ケーララ州のAdat地区およびベトナム・メコンデルタDinh Thanh地区の稲作農家調査のミクロデータに、誘発的技術革新の理論と農家主体均衡論のシミュレーション分析枠組みを適用した分析結果をワーキングペーパーとして取りまとめ、査読付き英文ジャーナルに投稿した。2023年度中には採択に至らなかったが修正要望を受けて改訂稿を作成し、再投稿済みである。両国のそれぞれの事例について、追加調査を行うことの意義とそのロジスティック調整のために、2023年8月にベトナムに出張し、メコンデルタのDinh Thanh地区の稲作視察と、Can Tho大学やRMIT大学の関係者との意見交換を行った。また、2つの事例研究を、代表性を持つ全国標本調査と比較させてその位置づけを明確にするために、ベトナムの家計調査VHLSSの個票データの整理をベトナムの研究者に委託し、そこから得たデータベースの解析を行うとともに、インドの家計調査NSSの農民経済状況特別調査の個票データを分析し、その結果をワーキングペーパーにまとめた。後者のワーキングペーパーは、日本南アジア学会にて研究分担者が報告し、世界中から集まった研究者から本研究に対する多くのコメントを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者が2021年までに実施したインド・ケーララ州のAdat地区およびベトナム・メコンデルタDinh Thanh地区の稲作農家調査のミクロデータを分析した結果を、ワーキングペーパーとして取りまとめ、査読付き英文ジャーナルに投稿した。まだ刊行には至っていないが、改訂要望を受けており、その可能性は高いと思われる。他方、追加調査を行うことの意義とそのロジスティック調整はインドに関して順調に進展し、ベトナムについても研究代表者と分担者が現地調査を行ったことにより、顕著な進展を見せた。ただし具体的な調査設計とそのコストをどう捻出するかの課題がまだ残っている。2つの事例研究を、代表性を持つ全国標本調査と比較させてその位置づけを明確にする作業は、進展が特に順調である。インドのNSSの個票データ分析結果はすでにワーキングペーパーとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト最終年度となる2024年度には、研究総括に特に力を入れる。研究分担者が2021年までに実施したインド・ケーララ州のAdat地区およびベトナム・メコンデルタDinh Thanh地区の稲作農家調査のミクロデータを分析したワーキングペーパーを査読付き英文ジャーナルに刊行すべく改訂作業を続ける。ベトナムとインドそれぞれの代表性のある全国標本調査データの分析がかなり進展しているため、これを新たなワーキングペーパーに取りまとめる。分析結果は、価格要因・価格外要因の農業生産性・農家所得へのインパクトおよびそのメカニズムに関して整理したものとなる。また、インド・ケーララ州のAdat地区の再調査、および研究成果について在インド研究者との意見交換を行うために、研究代表者と研究分担者がインドに出張する。国際農業経済学会の大会が首都のニューデリーで2024年8月に開かれるため、その大会でも関連論文を報告し、国際的な研究者ネットワークと研究成果を共有する。これらの論文は、その他の内外の学会(開発経済学会、日本経済学会、NEUDC会議、ISID会議など)でも報告して改訂作業を進め、業者による英文校閲にかけた上で、Journal of Development Economicsなど上位ジャーナルに投稿する。また、分析結果の持つ政策含意をポリシーブリーフという形で取りまとめ、国際協力機構(JICA)や世界銀行等に情報提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の出費項目には、ベトナムへの家計調査データ整理の作業委託やベトナムへの出張といった海外での支出が多く含まれ、為替レートの変動に対応するために全額を使い切ることができずに、支出額が予算を34,884円下回った。この未使用額を2024年度に回し、旅費に充填する計画である。
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