研究課題
不眠症の原因として、ストレスや不安などの感情的な状態、痛みなどの生理的な状態、薬物などがよく知られている。また、津波や地震などの大災害の後、多くの人が睡眠障害に悩まされることもよく知られている。感情状態には、悲しみ、怒り、不安(特定の対象を持たない長期的な不安)、恐怖(特定の対象を持つ短期的な不安)などの種類があり、いずれも睡眠覚醒に大きな影響を与える。現代では、不安は不眠症の主な原因の一つとも考えられている。そこで本研究では、不安がどのように覚醒を誘導するのかに注目した。扁桃体は、不安を調節するハブとして機能する重要な脳領域である。薬理遺伝学的に扁桃体のCRF神経を活性化すると、不安と覚醒が高まることが分かってきた。これらのデータは、扁桃体のCRFニューロンが覚醒の調節に関係していることを示唆する。しかし、扁桃体のCRF神経が、不安に関連した覚醒の制御にどのように関与しているかは、まだ不明である。今年度は、偏桃体のCRF神経の中で、どの神経伝達物質が覚醒に関与しているかを検証した。アデノ随伴ウイルスとCRISPR/Cas9を用い、特定の遺伝子を欠損させ、薬理遺伝学的に偏桃体CRF神経を活性化させた。その結果、ある分子を欠損させた時にのみ覚醒の誘導がみられなかった。この結果は、偏桃体CRF神経の分子Xが睡眠覚醒調節に関与している事を示す。
1: 当初の計画以上に進展している
CRF神経はストレス応答や睡眠調節に関与する事が示唆されてきている。これまで室傍核CRF神経が覚醒調節に関与する事を明らかにしてきた。一方、CRF神経は偏桃体にも見られ、恐怖・不安などに関与する事が示唆されている。不安は不眠症の主な原因の一つとも考えられている事から、偏桃体のCRF神経が睡眠覚醒調節に関与するのではないかと考えた。そこで、薬理遺伝学的に扁桃体のCRF神経を活性化すると、不安と覚醒が高まることが分かってきた。これらのデータは、扁桃体のCRFニューロンが覚醒の調節に関係していることを示唆する。また、アデノ随伴ウイルスとCRISPR/Cas9を用い、特定の遺伝子を欠損させ、薬理遺伝学的に偏桃体CRF神経を活性化させた。その結果、ある分子を欠損させた時にのみ覚醒の誘導がみられなかった。この結果は、偏桃体CRF神経の分子Xが睡眠覚醒調節に関与している事を示す。特定の分子が同定できたことから、研究は予想以上に進んだといえる。
昨年度の研究結果から、偏桃体CRF神経の分子Xが睡眠覚醒調節に関与している事を同定している。本年度は、神経トレーシング、光遺伝学、光イメージグを駆使し、その神経細胞の下流領域の同定と、神経回路の全貌を明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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