2021年度において、超磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)を PG で修飾した SPION-PG を合成し、癌増殖抑制作用を in vitro にて評価したが、特に優れた細胞増殖抑制効果は見られなかった。そのため、同じく in vitro にて光照射下や磁場中での温熱効果について検討を行ったところ、どちらも優れた効果が見られた。 2022年度では、まず、SPION-PG のより詳細な分析を行った。具体的には、ナノ粒子中の鉄分の定量や熱重量分析、電子顕微鏡分析、さら には、SQUID による磁性測定を行い、これまでに報告されてきたSPIONに比べ、より優れた磁場中での温熱効果を確認し、その原因を明らかにした。 最終年度である2023年度は担癌マウスを用いた in vivo において、腫瘍成長抑制効果について検討を行った。具体的には、京都大学環境安全保健機構放射線管理部門(RIセンター)にて、まず、マウス大腸癌細胞株CT26を移植したマウスを作成し、次に、 SPION-PG を尾静脈から導入一定時間後に光を照射し、光療法による癌の治療を試み、さらに、酸化鉄ナノ粒子の磁場中での発熱に基づく治療について、検討した。後者については、in vitro である水中では発熱が見られたものの、生体中においては、顕著な発熱が全く見られず、残念ながら、顕著な腫瘍成長抑制効果を確認するには至らなかった。これは、血液をはじめとする体液の粘性の高さに原因があると考えている。
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