研究課題/領域番号 |
21F50007
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 幾磨 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 准教授 (80543214)
|
研究分担者 |
VOINOV PAVEL 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2021-11-18 – 2024-03-31
|
キーワード | 比較認知科学 / 協働課題 / 他者表象 |
研究実績の概要 |
ヒトは自身の目的や意図を他者と共有することで、複雑な協力行動をおこなうことができる。複雑な社会の中で生活をする人にとって、このような社会的認知能力は最も重要な能力の一つといえる。そのため比較認知科学において、こういった協力行動の進化的起源を探る試みは長いこと注目を浴びている。しかしこれまでの研究の多くは協力行動の有無の報告にとどまっており、協力行動を支える認知機構を綿密に調べた研究はほとんどない。 そこで、本研究では、タッチスクリーンをもちいた2個体の協力課題遂行時に、被験体間でそういった共表象が生成されるのか、を実験的に分析する。2022年度は、まず単独条件として、一個体ずつ実験室に連れてきて装置への馴化を済ませたのち、数字系列課題を実施した。単独条件での基準成績に到達した個体から、順次ペア条件へと移行した。ペア条件のテスト場面においては、各個体は隣接する別の小部屋に入り、その部屋の中から共通のタッチスクリーンを操作し課題を遂行する。相手個体の行動はアクリル越しに観察可能であり、この状態で数字系列課題を協働しておこなう。2022年度は1ペアについてこのペアで隣接する部屋に入りタッチパネルを共有するテストを終え、もう1ペアの馴致を進めた。加えて、どうしても複数個体場面では課題をおこなわない被験体について、ヒトがパートナーを務める対ヒト条件を設定するため、新たな装置を作成するとともに、ヒトパートナーと協働する場面への馴致を進めた。3個体がこの馴致をおえ、2023年度にはテストにうつれる見込みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
来日が新型コロナの影響により大幅に遅れ、2021年度11月からのスタートとなったが、来日以降は、ほぼ予定通りに順調に課題の訓練、テストがおこなえている。一方で、複数個体場面では、他個体に委縮して課題をおこなわない個体が出てきたため、一部の被験体に対しパートナーをヒトに変更するなどの変更も必要となった。これにともなう多少の遅れも生まれたが、順調に装置・訓練の移行がおこなえた。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、ペア条件の馴致中である一ぺアについて、テストへと移行する。同様に、ヒトとペアを組む個体についてもテストを実施する。テストでは、各個体が触るべき数字を色分けすることで、それぞれの色と各個体が触るべき刺激を結び付けて表象することが可能かを実験的に検討する。また、すでにペアでのテストが終わった被験体を含め、テスト終了後、実験2へと移行する。実験2では隣り合わせで課題を実施する場面であることは変わらないが、協働場面ではない。つまり、個別に数字課題を行っているが、2個体が全く同じ課題設定(刺激の位置・順序)である場合と、異なる場合を設定し、課題の遂行成績を比較する。また、統制条件として単一個体で同様の場面を経験するゴースト条件を設定することで、チンパンジーにおける他者の行為に対する表象にアプローチする。
|