研究課題
本研究では、海洋島における植物の適応放散過程を系統ゲノミクスにより明らかにする。適応放散的種分化は、非常に短いタイムスケールで進行するため、適応放散した種間の遺伝的差異のうち系統的シグナルを持ったものは僅かである。そのため、従来の方法ではこの僅かな差異を捉えることが困難で、適応放散過程の詳細を明らかにすることはできなかった。加えて、種分化前後の分集団-種間の遺伝子流動の存在も系統情報をあいまいにする要因となり得ると予測される。そこで本研究では、葉緑体DNAの全長塩基配列解析とゲノムワイドな一塩基多型解析を組み合わせることで、カナリア諸島で大規模な適応放散を遂げた広義ノゲシ属の進化過程を明らかにすることを目的とする。葉緑体ゲノム系統樹と核ゲノム系統樹の比較解析により、過去の遺伝子流動を含めた種間の分岐過程を解明する。2023年度はカナリア諸島テネリフェ島とラゴメラ島で野外調査を実施した。現地でサンプル採集と標本の作製をおこなった。また、雑種と思われる個体の生育状況を確認した。実験に関しては、昨年度ショットガンシーケンス法により葉緑体DNAの全塩基配列を決定した個体を対象にRAD-seqを実施し、核の系統樹を作成した。葉緑体および核の系統樹の比較から、合計10の系統群を認識することができた。葉緑体と核の系統樹では、一部系統関係に不一致が見られた。現地での雑種個体の観察結果と併せて、カナリア諸島のノゲシ属では種間交雑が起こり、このような系統の不一致が見られることを考察した。本研究の成果をもとに、日本植物学会で口頭発表を行った。
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