研究課題/領域番号 |
22F21750
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 晃司 京都大学, 工学研究科, 教授 (50314240)
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研究分担者 |
WANG HAOCONG 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 強誘電体 |
研究実績の概要 |
BaTiO3やPb(Zr,Ti)O3などに代表されるペロブスカイト酸化物強誘電体は直接型強誘電体であり,電気分極そのものが常誘電-強誘電相転移の主秩序変数となる.一方で,ペロブスカイト関連層状酸化物では,2種類の非極性構造歪み (結晶学的軸周りの酸素八面体の回転と傾斜) に伴って電気分極が従属的に生じる場合がある.このとき,強誘電相転移を駆動する主秩序変数は酸素八面体の回転と傾斜に関するパラメーターであり,電気分極は従秩序変数となる.このタイプの強誘電体はハイブリッド間接型強誘電体と呼ばれる.本研究では,「物質合成-第一原理計算-構造解析-分光・物性測定」の有機的連携に基づいて,新規ハイブリッド間接型強誘電体を開拓するとともに,このタイプの強誘電体に特有の機能を創出する. 令和4年度は,遷移金属がBサイトを占有したペロブスカイト関連層状酸化物に焦点を当て,新規間接型強誘電体の開発を目指した.具体的には,固相反応法により候補物質の多結晶体を合成し,X線回折(XRD)と光第二高調波発生 (SHG) に基づく構造解析を行った.当初は,出発原料として市販の金属酸化物や炭酸塩を用いて通常の固相反応法で試料を合成したが,主相以外に多くの不純物相が生成した.一方で,液相プロセスにより作製した前駆体を原料粉末として用いることで,不純物の低減だけでなく,新規化合物が得られることがわかった.また,いくつかの化合物は極性構造をもつことが推定された.これらの成果は、ハイブリッド間接型強誘電体の種類の拡張や機能の創出につながる重要な成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、ペロブスカイト関連層状酸化物において新規化合物の合成に成功し,回折実験と分光実験により結晶構造が属する空間群を決定した.分極反転などの強誘電性の評価においてはリーク電流などの問題に直面したものの,問題を解決するためのいくつか手法に取り組んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
間接型強誘電体の物質設計では,元素選択の自由度が直接型の場合と比べて遥かに大きく,従来では実現困難であった機能を容易に付与することができる.令和5年度は,中性子回折や透過型電子顕微鏡観察を駆使して精密構造を決定する.また,単結晶品質とデバイス化を念頭に,気相合成法により単結晶基板上にエピタキシャル薄膜を作製する.さらに,光学的および電気的性質等の基礎的特性を明らかにする.この方向での研究を推進することにより,高機能な強誘電体が実現すると期待される.
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