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2022 年度 実績報告書

CO2からの直接燃料再生を志向した酵素型錯体ー官能基化シリカ複合触媒の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22F22342
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

大木 靖弘  京都大学, 化学研究所, 教授 (10324394)

研究分担者 JAYAKUMAR SANJEEVI  京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2022-11-16 – 2025-03-31
キーワード鉄 / 硫黄 / クラスター / 錯体 / 一酸化炭素
研究実績の概要

研究代表者らが近年見出した、CO2から炭化水素への触媒的な直接変換を可能にする酵素模倣型の金属硫黄クラスター錯体と、JSPS特別研究員が持つシリカ系材料のノウハウを組み合わせることで、シリカ担持ー金属硫黄クラスター触媒を開発し、CO2から炭化水素への多電子反応を促進することを、本研究の目的に設定した。
初年度の本研究では、ビピリジン(bpy)基を空孔表面に規則配列させたメソポーラス有機シリカ(以下PMO)を富士フィルム和光純薬より購入し、これを配位子として用いて鉄硫黄クラスター錯体、特に立方体型のFe4S4錯体を固定化(担持)した。固定化後の錯体密度は、bpy配位子に対して15%前後であった。この結果と、用いたクラスター錯体の大きさ、およびbpy基がPMO内で約4.5A x 13A程度の間隔で配列していることを考慮すると、PMOの内部空孔を構成する6角形の6辺全てに錯体が固定化されるのではなく3辺程度に1つずつの錯体が固定化されていると分かる。またクラスター錯体間に生じる立体反発の問題から、これ以上の錯体を担持することは困難であることも解釈できた。
調製した鉄硫黄クラスター錯体担持PMOを触媒としてCO2やCOの還元反応を検討した。その結果、CO2の還元は進行しなかったものの、COから炭化水素への還元反応は比較的効率よく進行することが判明した。炭化水素生成物は主にメタン出会ったが、C2やC3炭化水素も少量ながら生成することが判明した。また触媒活性は、鉄硫黄クラスター錯体のみを用いる場合と同程度かやや高いことが分かった。PMOの細孔奥深くで触媒反応が起こる可能性は低く、固定化した鉄硫黄クラスター錯体の全てが触媒反応サイトとして働かないと考えられる。従ってシリカ系材料へ鉄硫黄クラスター錯体を固定化することには、触媒寿命(あるいは触媒反応速度)を高める一定の効果があると評価できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初想定していた、ビピリジン基で官能基化したシリカ表面への鉄硫黄クラスター錯体の固定化(担持)に成功し、COから炭化水素への触媒的な還元反応が進行することまで確認できた。担持と触媒反応、2つの重要な鍵段階を実証でき、proof-of-conceptとしての重要な一歩を踏み出せたことから、進捗は順調と言える。初年度は論文発表に至らなかったが、2023年度中には論文発表できると考えている。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗で問題だと考えている部分は大きく2点あり、それらは(a)触媒の安定性(触媒寿命)と(b)基質の拡散である。両方に対応するために、鉄硫黄クラスター錯体から含モリブデン型錯体へとシフトし、かつ細孔径が大きいシリカ系担体を利用する。具体的な方策は以下に記載する。
(a)への方策:当該研究室内では、鉄硫黄クラスター錯体よりも骨格が安定なモリブデン硫黄クラスター錯体が触媒候補として良い成績を残し始めている。モリブデンを導入すると鉄系錯体より安定性が向上することに着目し、担持するクラスター錯体をモリブデン硫黄クラスター錯体あるいはモリブデン-鉄-硫黄クラスター錯体へ変更する。
(b)への方策:初年度に利用したPMOは、富士フィルム和光純薬が製造販売していたが、2022年度中に生産中止になった。またPMOは細孔径が3-4nmと小さく、最大1nmほどの大きさのクラスター錯体を内包させると基質等が拡散するためのスペースが十分に残らない。そこで、細孔径を10nm程度に広げるために、シリカ材料を変更する。市販の汎用シリカの中から、SBA-15に代表される材料を選び、その細孔内をクラスター錯体用の配位子で修飾する。モリブデンへ強く配位させることを念頭に、配位子としてはピラゾール類やピリジン類の利用を検討する。

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公開日: 2023-12-25  

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