研究課題/領域番号 |
20F40029
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 忠 大阪大学, 理学研究科, 教授 (20252223)
|
研究分担者 |
CHERTKOVA NADEZDA 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
|
キーワード | 軽元素流体 / 惑星深部 / 高温高圧力 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
本研究では、水や二酸化炭素などの地球や惑星の主要な揮発性成分に対し、惑星深部の高温高圧力の条件下での存在形態や性質を明らかにすることを目的とし、安定した高温高圧発生の実験技術と光学測定技術を組み合わせる技術開発と、C-O-H系流体及び固体の反応関係や挙動を調べる研究を推進している。 初年度となる本年度は、安定した高温高圧力発生の基礎技術の開発を開始し、クジラ型と呼ばれるダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置に、長時間の安定した高温発生が実現できる外熱式(抵抗加熱型)高温発生装置を組み込むための小型高温発生装置の開発を行った。発熱体としてはニクロム・白金・白金ロジウム合金・白金イリジウム合金線などを試作した。現状で外熱式では高温発生の上限が500℃程度となったが、現在用いている発熱体や電力線を大容量の太線に交換できれば、1000℃程度の高温発生が見込めることがわかった。そこで、非常に小さな超圧力発生装置であるダイヤモンドアンビルセルの内部に直径1mm程の太い電力線を電力ロスを最小限にして引き込むための改良を行った。様々なパターンでの試行錯誤を行った結果、自作のアーク溶接機を用いた電極の接続では通常の電力線に用いられる銅やタングステンなどの金属線が強く酸化されてしまうため、電極と発熱体との特殊な溶接が必要であることがわかった。そこで新たにアルゴンガス流入型のスポット溶接機の導入と、レーザーを用いた溶接を引き続き試すこととした。この他、ダイヤモンドアンビル本体や観察光学系の温度上昇を防ぐための特殊な冷却器を設計・準備した。これらの結果を元に次年度も引き続いて基礎技術開発を継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、予定していた特別研究員の来日が、新型コロナウイルスの影響による海外からの渡航制限と入国後の隔離措置などのため、当初の4月から12月まで大きく遅れてしまった。また、年末年始における緊急事態宣言の発令による行動制限などにより、実質的に3ヶ月程度しか研究期間を確保することができなかった。本研究の実験に必要なダイヤモンドアンビルやその台座などの消耗品は、実験計画を特別研究員とより詳細に相談して仕様を決定し、発注してから納品まで3ヶ月程度かかったため、3月後半に納入となった。当該年度は、予定通りの研究開始ができていれば、最終的に5万気圧500℃程度までの高温高圧下流体の光学観察までを実施する予定であったが、本研究室で使用している顕微ラマン分光装置の予期しない制御系トラブルも発生したため、年度末の3ヶ月間に、すべての予定していた部品の納入より先に開発が開始できる小型高温発生装置の試作と高温発生テストを行うこととした。その結果、従来程度の500℃の発生は可能であることがわかったが、大容量電力線の溶接に問題がある事がわかり、そのための対策を検討した。これらの対策後、予定通りの高温高圧下におけるC-H-O系試料の光学観察を開始できる見込みであり、研究開始のタイミングが8ヶ月遅れという状態からスタートしたが、その遅れは現状でかなり取り戻せていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は当初計画を実現するために、基礎技術開発をよりペースを速めて実施したい。翌年度の夏期頃には試料の光学観察を開始できる事を目指す。圧力発生に関しては、将来的に更なる高圧力下での光学観察を想定して、約30万気圧程度の圧力を発生できるダイヤモンドアンビルを確保できており、これまでの実験実績からも特に問題はない。また、いくつかの安定した高温発生装置開発における解決すべき問題点が明らかになったため、次年度の予算執行が可能になり次第、新たなアルゴンアーク溶接機を導入して改良を行う。今後はより高温高圧力条件下での観察を目指した装置開発を、可能な試料観察と並行して進めることとする。 当初計画の中では放射光を用いたその場観察実験を含めているが、昨年度の春期も新型コロナウイルスの影響により、外部施設での共同利用実験に大きな制約が発生し、マシンタイムの延期・停止が起こったため、今後も学外施設の利用を前提とした実験計画は不確定要素が大きい。また、非常事態宣言措置が発令・長期化したり、組織内に新型コロナウイルスの感染者の発生が起こった場合などには、研究活動そのものに制約がかかる可能性もある。そのため今後は可能な限りの実験を研究室内で行える体制を整えると共に、学内での新たな共同研究体制の可能性も考える。
|