研究課題/領域番号 |
22F20070
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
夛田 博一 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40216974)
|
研究分担者 |
BHATTACHARYA SHATABDA 大阪大学, 基礎工学研究科, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
キーワード | 2次元材料 / スピンクロスオーバー錯体 / 分子磁性 |
研究実績の概要 |
本研究では、2次元材料表面に空孔または結合部位を作成して、そこに異種のナノ物質を結合させ、さらにそこを起点として、反強磁性酸化物/水酸化物のネットワーク状薄膜を成長させる。ネットワークを形成したハイブリッド構造には大きな保磁力とスピンの表面ピン止めが存在するため、これらの材料をナノ磁気デバイスとして用いるための指針を導出する。 今年度は、化学合成グラフェン(CSG)やMoS2などの2次元材料の表面構造を条件を変えて作製し、空孔作製条件の最適化を行った。 反強磁性層には遷移金属(ニッケル)の酸化物/水酸化物 (NiOOH、Ni(OH)2) 薄膜を用いた。磁性層の厚さを 5 ~ 20 nm に調整し、低温領域での磁化の特性を測定することで、形成された 2次元ハイブリッド構造の保磁力が表面ピン層により 5000 ~ 10000 Oe と高いことを明らかにした。100K で磁化メモリー効果を測定し、長期緩和熱残余メモリー効果を確認した。 また、鉄トリアゾールを骨格とするスピンクロスオーバー (SCO) 化合物の合成にも着手した。さらにこの分子を、2次元表面上に成長することで、SCO分子のネットワークが構築されることを確認した。スピン状態遷移温度は 382K から 325K にシフトし、40K の大きなメモリーヒステリシスの存在を観測した。電気伝導度の特性計測から、2次元基板の高い電気伝導率が、その上に結合した SCO分子ネットワークのスピン状態遷移の検出に有用であることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、2次元材料の表面上に極薄の反強磁性層を形成すると、ナノ磁気デバイスに適した、高い転移温度および高い保磁力を持つ強磁性層が構築されることを確認した。 期待通りのサーモレムナントメモリ効果が観測され、堅牢な磁化メモリが高温まで持続可能であることを示した。 次に、分子磁石に対応するものとして、Fe-トリアゾール、Fe-ベンジムベースのスピンクロスオーバー錯体を合成し、2次元ハイブリッド材料を作製し、磁化と輸送の詳細な研究を可能とした。 スピン状態遷移の高温検出は、テンプレート基板とのハイブリダイゼーションによる電子特性の変調によることが確認され、この界面電荷移動は、スピンクロスオーバー分子ネットワークのFe中心間の磁気秩序から生じることを見出すなど、計画通りの進捗をみた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に作製したスピンクロスオーバー錯体ネットワークの熱残留磁化特性を詳細に研究する。 初年度では、グラフェンおよびMoS2などの2次元基板上にスピンクロスオーバーナノ粒子ネットワークが構築できることを確認した。 今年度は、高温スピントロニクスデバイスを形成するために、2次元テンプレート基板上にテルビウムおよびジスプロシウムを含む高モーメントベースの分子ナノマグネットを合成する。 テンプレート (MoS2、グラフェンなど) の役割は非常に重要であるため、分子磁石の磁化を基板と結合するために2次元強磁性体 (CrI3) を挿入する。
|