研究課題/領域番号 |
22F21324
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
兼村 晋哉 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (10362609)
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研究分担者 |
MONDAL TANMOY 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | ヒッグスセクターの物理 / ニュートリノ微小質量生成機構 / コライダー物理 |
研究実績の概要 |
ニュートリノ質量問題を解決する逆シーソー機構や輻射シーソー機構に基づく新模型を提案する。ヒッグスセクターの拡張を含む模型を考えることにより、電弱対称性の破れの起源と密接に関係し、同時に暗黒物質粒子を含み、バリオン数生成問題を解決することも視野に入れる。この模型で既存の各実験データを説明し、ミューオン磁気能率g-2測定における標準理論予測とのずれ等をも説明することを目指す。そしてこの模型を将来の各種実験で多角的に検証するための研究を行う。
この模型はヒッグスセクターの拡張を含むので、電弱対称性の破れの起源と密接に関係するのみならず、暗黒物質粒子を含み、さらにCPの新しい破れを自然に含むことからバ リオン数生成問題に迫ることが可能であり、多彩な現象を同時に説明できる可能性が高く大変興味深い。この模型で既存の各実験データを説明 し、ミューオン磁気能率g-2測定における標準理論予測とのずれを説明することも目指す。ついでこの模型を各種実験で多角的に検証する理 論 研究を行う。高輝度LHC実験や各種暗黒物質実験、さらにはHyperK, JPARC, ILC等の将来実験を見据えた本研究は、オリジナルでタイムリーであり、両者の知識と経験、アイデアを融合し期間2年で達成できる。新物理に実証的に迫る極めて意義のある研究である。
2022年度は、これらの新模型の検討にあたり、鍵となる拡張ヒッグスセクターの研究をおこなった。特に実験を説明する拡張ヒッグス模型の一つであるヒッグス2重項2個の模型の湯川結合の取りえるパターンについて研究し、いわゆるWrong Sign 湯川結合がまだ実験で許されていることに注目、その現象論的研究をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、ニュートリノ質量問題を解決する逆シーソー機構や輻射シーソー機構に基づく新模型を提案することである。すなわちヒッグスセクターの拡張を含む模型を考えることにより、電弱対称性の破れの起源と密接に関係し、同時に暗黒物質粒子を含み、バリオン数生成問題を解決することも視野に入れる。この模型で既存の各実験データを説明し、ミューオン磁気能率g-2測定における標準理論予測とのずれ等をも説明することを目指す。そしてこの模 型を将来の各種実験で多角的に検証するための研究を行うものである。
2022年度は、まず新模型の検討に必要な拡張ヒッグスセクターの現象論的研究をおこなった。その一環として、実験的に Wrong Sign (WS) と呼ばれる性質の湯川結合を伴うヒッグス2重項2個のヒッグス模型が許されていることを知り、その現象論的研究を優先して行うことにした。研究は順調に進み、論文として出版することができた。WSシナリオでは、ダウン型クォークおよあるいは荷電レプトン用の湯川カップリングが標準モデルの湯川結合と反対の符号を持ち、現在のフレーバーデータとヒッグス信号強度を説明るすようなパラメータ領域が残されている。本研究ではユニタリー性などの理論的な様々な制約の下で、高輝度LHCで追加のヒッグスボソンの直接検索によって本シナリオを検証する可能性を研究した。重いヒッグスボソンのつい生成からのマルチヒッグスイベントが、WSシナリオを高輝度LHC検証する上で重要であることを明らかにした。本成果は、拡張ヒッグス模型のあり方を実験で絞り込む上で大変興味深く、本研究の最終目標であるニュートリノ模型の検討にも活かされる。成果は論文として出版され、また学会や研究会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ニュートリノ質量問題を解決する逆シーソー機構や輻射シーソー機構に基づく新模型を提案することを目指している。この模型はヒッグスセクターの拡張を含むので、2022年度は、鍵となる拡張ヒッグスセクターの研究をおこなった。特に実験を説明する拡張ヒッグス模型の一つであるヒッグス2重項2個の模型の湯川結合の取りえるパターンについて研究し、いわゆるWrong Sign 湯川結合がまだ実験で許されていることに注目、その現象論的研究を実施した。
2023年度は、上記成果を踏まえて、電弱対称性の破れの起源と密接 に関係するだけでなく、暗黒物質粒子を含み、CPの新しい破れを自然に含む拡張されたヒッグスセクターの物理について、そのコライダー現象を研究する。特に、他フェルミ粒子と 強く結合しないヒッグス場の物理においては、第2第3のヒッグスボソンが光子対に崩壊する崩壊分岐比が極めて大きくなる。このような模型では、CPの破れの効果に比例してLHC実験での重いヒッグスのアソシエート生成からの4光子終状態という特殊なプロセスが発生する。このプ ロセスを通じてヒッグスセクターのCPの破れを明確に検証できる可能性がある。そこでこの可能性を将来の高輝度LHC実験も含めて徹底的に検 証する。ついでこの研究を発展させて、ハドロンコライダーであるLHC実験だけでなく、ILCなどの電子陽電子衝突実験における4光子過程を用 いた検証方法も研究する。得られた成果は 、国際会議や研究集会で成果を逐次発表するとともに、論文として出版する。
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