研究課題
X線自由電子レーザー(XFEL)を利用したX線発光分光診断と、X線回折および速度干渉計計測を組み合わせた統合実験を実施した。独自に合成・作成した惑星物質FeOやFe2O3などの鉄酸化物ターゲットに関して、シングルショットベースのX線発光分光データを初めて取得した。ハイパワーレーザーのエネルギー密度を2e13 W/cm2程度まで変化させた条件で、約250万気圧までの固体および液体の衝撃超高圧状態を生成した。衝撃圧縮用レーザーのパルス幅は5 ns、集光照射スポットサイズはターゲット表面で直径170もしくは260ミクロンであった。X線発光を誘起するX線自由電子レーザーパルスの光子エネルギーは約9 keV、パルス幅は10 fs、集光スポットサイズ直径は約30ミクロンであった。異なる観測角度の2台の分光診断システムを同時に稼働して、レーザー衝撃圧縮下の鉄k-alpha線およびk-beta線近傍の振る舞いを観察し、電子スピン状態の変化を表すショルダーパターンが現れることがわかった。ショックドライブレーザーのエネルギー安定性や、データバックグラウンドノイズの問題を改善し、シングルショットで高SN比の有意な信号を得ることができた。今後の結晶分光システムの改善に有益な情報が得られた。レーザー超高圧に伴う結晶構造変化は、同じXFELパルスを用いた独立のフェムト秒X線回折によって明らかにした。また線結像速度干渉計(VISAR)観察も同時に行い、衝撃波の到達時刻とその圧力を正確にモニターした 。超高速分光診断の新しい実験プラットフォームに関する技術的知見を十分に蓄積できた。
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