研究課題
王博士は,公開されている大規模なゲノムワイド関連解析データを活用した口蓋裂の発生に関わる一塩基多型 (SNP)解析,および,マウス口蓋組織の器官培養実験を行い,メカニカルストレスとWntシグナル経路が口蓋の発生において重要な役割を担っている事実を掴んだ.しかし,未だその詳細なメカニズムは不明である.一方,当研究室では,1細胞遺伝子解析や空間的遺伝子解析など,最近の技術を取り入れながら,骨の発生や再生過程に関する研究を展開している. そこで,本申請研究では彼のこれまでの研究成果を基盤に,我々の有する最新の分子生物学的解析手法を加え,口唇・口蓋を含めた顎顔面の発生メカニズムを明らかにする.今年度は,すでに所有している空間的遺伝子解析 (Visium Spatial Gene Expression, 10x Genomics)結果を用いて,口蓋に焦点を置き解析を行った.しかし,発生期の口蓋組織は小さく,Visiumの解像度では解析が難しいことがわかった.そこで,NanoString社の空間的遺伝子解析のアプリケーションを用いるため,酵素処理や抗体染色の条件検討を行い,染色条件を絞り込むことができた.また,マウス胎生期の口蓋発生に関するsingle cell RNA-seqの公開データをダウンロードし,再解析を行った.その結果,口蓋の発生に関わる遺伝子の抽出に成功した.そこで,胎生期の口蓋組織を用いた3次元モデルにて,抽出遺伝子の機能解析を行った.その結果,抽出された遺伝子群の中に,口蓋の発生に深く関わっている遺伝子があることが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
Visiumを用いた空間的遺伝子解析がうまく行かなかったが,すでにsingle cell RNA-seqの公開データを用いて解析を行い,口蓋の発生に関与している遺伝子群の抽出をすることに成功し,それらの遺伝子の機能解析を終えており,概ね順調に研究が進んでいると考える.
2023年度は,NanoString社の 空間的遺伝子解析のアプリケーションを用いて,口蓋の発生を詳細に解析し,口蓋の発生に関与している遺伝子の絞り込みを行う予定である.そして,マウス胎生期の口蓋組織を用いたorgan culture modelを用いて,抽出された遺伝子の機能解析を行う予定である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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