予測不能な社会に生きる子どもたちには、「自ら学ぶ力」(自己学習能力)の習得が求められている。生活課題に直面した場合には、解決方法を適切に選択し,多角的な視野で解決できる能力が必要となる。義務教育において学ぶ楽しさや学ぶことの意義を実感し,自ら問いを立てて主体的にその解決を目指し,多様な人々と協働しながら,様々な資源を組み合わせて解決に導いていくなど生涯を通して学んでいくための学び方を習得することが急務の課題であると考えられる。そこで、本研究は子ども自身が主体的に学ぶ学習に取り組んでいるM小学校に着目し、その取り組みの実状を解析することを通して、自己調整学習能力を育成する授業モデルを検討することを目的とする。M小学校は幼小中一貫教育に3つの次元(躍動する感性、レジリエンス、横断的な知識)の基礎となる資質・能力を育成する新領域「光耀」を設定し、教科教育と連動したカリキュラムを開発し実践している。M小学校での授業を観察し、実態を踏まえたうえで、研究主任、第1学年担任、第2学年担任にインタビュー調査を実施した。それを逐一文字化し、ラベル化し、KJ法によって分類した結果を図式化し考察した。M小学校での授業は問題発見し解決する学習のプロセスを重視していた。子どもの思いを大切にした「流動的」カリキュラム、子どもの切実感を大切にし、自分なりの輝きと生きる力を見据えた指導方法が特徴的であった。そして、自己調整学習能力育成のための授業モデルを構成する要因間の関係を示し提案した。これらの結果から、日本とは異なる生活文化や社会的背景を有する中国及びアジア圏の小学校教育の課題解決に寄与できる示唆が得られたと考えられる。
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