研究課題/領域番号 |
21F50330
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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研究分担者 |
SINGH BALJEET 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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キーワード | 動的核偏極 / NMR / 光励起三重項 / ナノ多孔体 |
研究実績の概要 |
核磁気共鳴分光法(nuclear magnetic resonance, NMR)や磁気共鳴画像化法(magnetic resonance imagingm, MRI)は分子構造解析や診断に用いられ、現代の科学や医療において必須の技術である。しかし、これらの技術は極めて感度が低いという課題を抱えていた。その原因は核スピンの偏極率が低いことにあり、電子スピンのより高い偏極率を用いて核スピンの偏極率を高める方法を動的核偏極(dynamic nuclear polarization, DNP)という。従来のラジカルを用いたDNPでは1 K程度の極低温条件が必要であるが、励起三重項を用いたDNP(triplet-DNP)は室温付近でも機能するという特徴がある。 本研究の目的は、triplet-DNPをナノ多孔性材料中にて実現し、その核偏極をゲスト分子に移行することで、これまで困難であった室温での高感度NMR・MRI測定を可能にすることである。ナノ多孔性材料として、ナノ細孔を有するシリカやアルミナといった無機多孔体を用いた。偏極源としてはポルフィリン誘導体を用い、溶媒や濃度といった条件を最適化することでポルフィリン誘導体を凝集させることなくナノポーラスシリカやアルミナの表面上に嘆じすることに成功した。得られた色素担持ナノ多孔体の時間分解ESR測定により、偏極した三重項状態を形成できていることを確認した。シリカやアルミナはプロトン(1H)の緩和時間が短く、偏極した状態を蓄積できないという問題があったが、新たなサンプル処理法の開発により長い緩和時間を有するナノ多孔体の調整に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ多孔体に偏極源を凝集させることなく分散し、高い偏極三重項状態を達成したことは、本研究の目的であるナノ多孔体におけるtriplet-DNPとゲスト分子への偏極移行に向けた重要な基礎的技術を確立できたといえる。更に課題であったナノ多孔体の短い緩和時間を解決する新たな手法の開発に成功し、目的達成への道筋が明らかとなった。以上より当初の目的の達成に向けて順調に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきたナノ多孔体への色素分散手法や長い緩和時間を持つナノ多孔体の調整を基に、ナノ多孔体に導入したゲスト分子へと偏極を移行することを試みる。偏極移行先のゲスト分子としては比較的長いプロトンの緩和時間を有する生体分子を選択して用いる。ポルフィリン誘導体を修飾したナノ多孔体に生体分子を複合化し、光とマイクロ波を繰り返し照射するtriplet-DNPプロセスを行った後にNMR測定を行うことで、目的とする生体分子のNMR感度向上を確認する。
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