近年、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料が次世代の発光材料として注目を集めている。TADF材料は、有機EL(OLED)において最大100%の内部EL量子効率を達成可能である。しかし、デバイス駆動時に十分な長期安定性を示すTADF材料はこれまで開発されておらず、有機ELへの応用を指向した場合、発光材料の高耐久化は極めて重要な課題である。置換カルバゾール類は、高耐久な有機半導体材料のビルディングブロックとして極めて有望であり、定評のある基本分子骨格である。また、安価かつ化学的な分子修飾が容易であるという材料開発上の利点も有している。 本研究では、カルバゾールとホウ素を組み合わせたBBCz-SBを基本骨格として用い、これに適切な分子修飾を行うことにより、広い可視領域で狭帯域発光を示す新規TADF材料を創製した。具体的には、基本骨格を二量化する設計戦略により、高効率の緑色TADF狭帯域発光を実現した。材料設計・合成から物性・デバイス評価に至るまで横断的に研究を実施した。また、基本骨格に更なるπ縮環を施すことで、より長波長の狭帯域TADF発光を得ることにも成功した。本プロジェクトを通して、数種類の新規TADF材料を開発することができ、高効率で高耐久な狭帯発光性TADF材料の合理的な設計指針を得ることができた。
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