研究課題
日本の鉄鋼業がCO2排出の最大業種となっている背景から、鉄鋼スラグを基とした窒化炭素との光触媒複合体を合成し、カーボンサイクルを促進する糖から乳酸への転換反応を加速する反応に応用した。鉄鋼するラグはよく定義されたものを使用するため、実際の転炉スラグを模した人工スラグを合成した。人工転炉スラグには可視光域にバンドギャップをもつ光触媒の一種であるCa2Fe2O5が含まれている。人工転炉スラグを基として、dicyandiamide を前駆体とし、酸素ドープC3N4を結晶化させた。人工転炉スラグの混合率が5%のときに可視光照射下で、90%以上の乳酸転換率が得られた。この光触媒複合体によって、グルコースだけではなく、フルクトースや五炭糖のキシロースでも乳酸の収率は90%以上、グルコース転換率は100%が得られた。光照射下での励起電子の移動方向は、Ca2Fe2O5側からC3N4g側であること、主要ラジカルは・OHと・O2-であることから、複合体内での電子移動を含めた光触媒反応機構はType IIではなく、Zスキーム型であることが推定された。この複合体の人工スラグを実際の転炉スラグに置き換えた場合にも同様の光触媒効率が確認された。この内容はChemical Engineering Journalに掲載された。乳酸への転換率をさらに向上させるにはよりアルカリ度を上げ、異性化平衡をシフトさせることが効果的との予測から、C3N4にアルカリ金属およびアルカリ土類金属のドープを試みた。最も効果的であったのはMgドープで、ドープ量を最適化し、実際の転炉スラグと複合化させた。その結果、光源4000W/cm2 Xeランプからの光照射条件のもとで乳酸の収率は71%、グルコース転換率は97%がえられ、上述の酸素ドープC3N4と転炉スラグとの複合体と比較すると、Mgドープ型がより優れていることが確認された。
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Chemical Engineering Journal
巻: 473 ページ: 145167~145167
10.1016/j.cej.2023.145167
Crystals
巻: 13 ページ: 1609~1609
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