研究課題/領域番号 |
22F22082
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 史彦 九州大学, 農学研究院, 教授 (30284912)
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研究分担者 |
JOTHI JAKIA SULTANA 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-07-27 – 2025-03-31
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キーワード | 農業工学 / Digital Twin / 殺菌 / UV-C / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究は、収穫後の農産物の腐敗による劣化を抑制する手法として、紫外線照射殺菌法に着目し、この工程を数値解析的アプローチによって最適化するものである。このために、数値流体力学モデリングなどの数値解析アプローチにより、均一照射を行うための装置設計・制御指針を提示することとした。 本年度は、X線CT装置により被照射体となる青果物形状データを取得し、コンピュータ上に再構築した。また、UV-C殺菌装置についても仮想空間上に再構築し(Digital Twin)、ランプの配置やベルトコンベアの移動速度等をモデルパラメータとする解析モデルを開発した。ベルトコンベアによる青果物の空間移動については、スライディングメッシュ法を導入することで、より厳密なモデルの再現を可能とした。ここで開発したモデルを用いて、青果物表面におけるUV-C照射強度分布を可視化したことで、各種パラメータが影響を強度分布に及ぼす影響を容易に把握することが可能としたのみではなく、照射強度分布の統計的特徴量(平均強度、変動係数)を算出することで、均一性の評価を可能とした。 さらに、腐敗性微生物の殺菌速度論モデルを照射モデルに組み込み、微生物が青果物表面で殺菌されていく過程を時空間分布図として可視化した。加えて、実験によるモデルの妥当性の検証も行ったが、殺菌については微生物自体の抵抗性のばらつきが大きいため、確率論的なモデルによる評価が有効となることが示唆された。また、赤外線照射によるソフト加熱前処理の効果についても検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮想空間上でUV-C殺菌モデルを再構築するためには、Digital Twinアプローチの基礎となる数値解析法の理解とモデリング技術の習得、さらには、実形状を再現するための計測技術の習得が必要となるが、研究分担者であるJOTHI JAKIA SULTANA氏は、これを短期間で習得し、実際の殺菌装置と青果物形状を3次元でコンピュータ上に再構築、バーチャル空間で紫外線照射殺菌予測を可能とするプログラムの作成に成功した。 UV-C殺菌装置設計・制御の最適化のためには、さらなるモデルの改良と多くの設定条件でのシミュレーションを反復、精度の向上に挑む必要があるが、基礎となるの研究フレームは完成するとともに、微生物のハンドリングや青果物の品質評価試験遂行に問題はなく、おおむね順調に進展しているものと結論する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、収穫後の農産物の腐敗による劣化を抑制する手法として、化学薬品を使用しない非加熱処理法のひとつである紫外線照射よる青果物表在菌の殺菌法の最適化について、実験的・数値解析的研究を遂行する。これにより、青果物品質に悪影響を与えず、かつ、適切な殺菌を達成する紫外線照射についてさらに考究し、殺菌操作の最適化を行う。また、紫外線照射ストレスによる機能性成分の増強の可能性についても調査したい。数値流体力学モデリングなどの数値解析アプローチにより、均一かつ過剰照射を防ぐための殺菌装置設計・制御指針を提示するとともに、青果物の品質面に与えるメリットについても検討し、最終的にはフードロスの低減に寄与したい。 問題点としては、被加熱対象となる柑橘類が季節によっては入手困難なこともあるたっめ、この対応として対象品目を広げ、より多くの青果物についてUV-C殺菌の可能性を探ることとする。
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